川崎市中原区のみなさま、こんにちは。武蔵小杉駅からすぐの池田動物病院です。
わんちゃんが中高齢になるとなりやすい病気の1つに「甲状腺機能低下症」があります。
以前よりも元気がなくなった、反応が鈍くなった、そういった症状は年齢のせいではなく、甲状腺機能低下症のサインかもしれません。
当院では、甲状腺の数値をチェックできる血液検査もございますので、甲状腺機能低下症かも?と思ったら、ご相談ください。
1|犬の甲状腺機能低下症とは?
まず、甲状腺とは何でしょう?
1-1|甲状腺とは
甲状腺は、喉頭、気管の両側にあり、甲状腺ホルモン(FT4)を分泌する内分泌器官です。この甲状腺ホルモンには、身体の基礎代謝を活発にする作用があります。「甲状腺機能低下症」は、甲状腺ホルモンの分泌が不足するため、身体の組織の代謝が低下し、さまざまな症状が引き起こされます。
1-2|甲状腺機能低下症
甲状腺機能低下症は、甲状腺の腫瘍や萎縮によって、甲状腺ホルモンが産生できなくなる病気です。ねこちゃんと比べるとわんちゃんに多く、わんちゃんで最もよく見られる内分泌疾患の1つです。ねこちゃんの場合は、甲状腺機能亢進症が多く見られますが、甲状腺機能低下症はほとんど見られません。中高齢のわんちゃんに多くみられます。
以下の犬種で好発しやすいと言われています。
✓ トイ・プードル
✓ チワワ
✓ ゴールデン・レトリーバー
✓ ラブラドール・レトリーバー
✓ シベリアンハスキー
✓ ドーベルマン
✓ ビーグル
2|犬の甲状腺機能低下症の原因
犬の甲状腺機能低下症の原因は、ほとんどが甲状腺組織の自己破壊によって、甲状腺ホルモンが産生できなくなる原発性甲状腺機能低下症です。自分の組織を自分で破壊してしまうリンパ球性甲状腺炎や、原因不明の甲状腺萎縮によって起こります。
先天的な甲状腺機能低下症(クレチン病)や、甲状腺の腫瘍、下垂体や視床下部(脳にある、甲状腺を刺激するホルモンを出す臓器)の腫瘍や外傷などが原因となることもありますが、非常にまれです。
3|犬の甲状腺機能低下症の症状
甲状腺機能低下症は、片側または両側の甲状腺組織の萎縮や腫瘍化などによって、甲状腺ホルモンが産生されなくなる病気です。そのため、元気がなくなる、肥満、脱毛、皮膚が黒くなる、などの症状がみられます。新陳代謝も落ちるため、刺激しないと起きなかったり、反応が鈍くなったりします。
甲状腺機能低下症の主な症状
・ 元気がなくなる
・ 食欲低下
・ 肥満、ずんぐりした体型
・ 活動性低下(歩かない、立ち上がらない、寝ていることが多い)
・ 成長不良
・ 悲劇的顔貌(悲しい顔をしている)
・ ホルモン性両側性脱毛(左右対称性脱毛)
・ 尻尾の毛が抜ける(ラットテイル)
・ 色素沈着(皮膚が黒くなる)、フケが増える
・ 脂漏症(身体が脂っぽい)
・ 膿皮症
・ 便秘
・ 徐脈、低血圧
・ 低体温
・ ふらつき
食欲が低下している割に体重が減らなかったり、1年~3年ぐらいかけてゆっくりと症状が進行していくので、病気のサインに気づくのが遅れてしまうかもしれません。
4|犬の甲状腺機能低下症の診断
・血液検査
甲状腺機能低下症の診断では甲状腺ホルモン(T4およびfT4の低下)の測定および、その上位ホルモンであるTSH(原発性の場合は下垂体に問題はないため、通常TSHは高値)の測定が行われます。
また、甲状腺機能低下症を疑う場合、高コレステロール血症が多くの症例で認められるため、こちらも重要な検査項目となります。
※甲状腺ホルモンは、甲状腺機能低下症以外でも低下することがありますので注意が必要となります。
例
・ 他の薬の影響
・ 糖尿病やクッシング症候群などの疾患がある
・ 麻酔や手術の影響
・ 超音波検査
超音波検査で甲状腺の腫大を確認します。
5|犬の甲状腺機能低下症の治療法
犬の甲状腺機能低下症の治療は、甲状腺ホルモンを補充することです。一般的には、内服薬による内科的治療があり、甲状腺腫瘍の場合は外科的治療があります。
甲状腺機能低下症は、薬で完治する病気ではなく、一度なってしまったら生涯付き合っていかなくてはなりません。
5-1|内服薬(内科的治療)
甲状腺ホルモンを補充する甲状腺薬(レボチロキシン)の投与を行います。一般的に生涯にわたっての投薬が必要となります。投薬にあたっては、まず必要な量を確認するために、投薬前後の血液検査で甲状腺ホルモン濃度の測定をします。投与量が多い場合には、甲状腺機能亢進症を引き起こしてしまう可能性があるため、定期的に血液検査を行うなど注意が必要となります。
また、レボチロキシンの副作用として、頻脈、パンティング、元気消失、食欲不振、体重減少などが見られることがあります。投薬開始後に体調等で気になることがある場合は、すぐに動物病院へ相談してください。
お薬の投与量や回数などは、それぞれのわんちゃんの症状や甲状腺ホルモンの濃度により異なるため、定期的な検査を含め、しっかり通院・検査を継続していくことが大切です。
5-2|外科的治療
甲状腺機能低下症を起こしている原因が、甲状腺の悪性腫瘍である場合に外科手術や放射線治療の選択を考えます。その際は、年齢や体調による麻酔リスクの高さや他の疾患の有無を検討し、どの治療を選択するか判断材料とします。
甲状腺を摘出する手術になりますが、両側の甲状腺を摘出した場合には、甲状腺ホルモンを分泌することができなくなるため、甲状腺ホルモン薬の投与を生涯行っていくことが必要となります。しかし、取り出した甲状腺が片側だけの場合には甲状腺ホルモン薬の投与を行う必要はありません。症状や状態などによって、適応時期や手術方法が異なります。
外科的治療を行う場合は、麻酔や術後の合併症のリスク、手術後のケアなどについても、動物病院と相談しましょう。
5-3|甲状腺機能低下症を治療しないとどうなる?
甲状腺機能低下症を治療せず放置してしまうと、呼吸不全・低体温・昏睡状態となり、命に関わることもあります。
6|犬の甲状腺機能低下症の予防法
犬の甲状腺機能低下症の予防法は、残念ながらありませんが、血液検査を含む健康診断を定期的に行い、早期発見につなげましょう。
当院でも、春(3~5月)と秋(9~11月)に血液検査の健康診断キャンペーンを行っており、中高齢のワンちゃんにぴったりの健診・甲状腺・腎臓セットもございますので、お気軽にご相談ください。
7|犬の甲状腺機能低下症のまとめ
元気がなくなったり、散歩に行きたがらなかったり、年齢のせいかな?と思っていても、実は甲状腺機能低下症の症状かもしれません。
毎日一緒に過ごしていると、ゆっくり進行する甲状腺機能低下症のサインを見逃してしまうかもしれないので、定期的な健康診断をして、病気の早期発見につなげましょう。
菊地(愛玩動物看護士)
ペンギンが好きです。ジェンツーペンギンも好きですが、アデリーペンギンが一番のお気に入りです。