春の養生

川崎市中原区の飼い主のみなさま、こんにちは。
武蔵小杉駅からすぐの池田動物病院です。

寒い冬が終わり、春の日差しを感じる季節になってきました。
春は動物にとっても、人にとっても1番過ごしやすい季節である一方で、肌トラブルや寒暖差による体調不良が出やすい季節でもあります。
また、新生活が始まり、人やペットを取り巻く環境が変化することで、ストレスを多く感じる季節でもあります。

今回は春に起こりやすいトラブルやその対処法について見ていきましょう。

春は『発陳』

春は『発陳(はっちん)』の季節とされています。
発陳の『陳』は古いものをあらわし、“春の陽気の上昇と共に、うちにこもっていた陰気が発散する。万物が息を吹き返したように発生する。”という意味をもちます。
古いものを出して、新しく芽吹くイメージです。

暖かい春の訪れと共に、陽の気が高まってくると、風が吹き、昼の時間が長くなり、植物も芽吹いてきます。
陽の訪れは、環境だけでなく、私たちやペットの体にもやってきます。

五行学説と春

五行学説とは

あらゆるものを『木・火・土・金・水』(もく・か・ど・こん・すい)の5つの要素に分類して考えるのが、五行学説という中医学の考え方です。
これを環境や季節、人やペットの体にあてはめて考えます。

五行学説による分類

五行分類表

 
五季長夏(梅雨)
五気湿
五臓
五腑小腸大腸膀胱
五官
五体皮毛
五華
五志悲・憂驚・恐
五色

五行学説の『木』の特性

五行学説による分類で『木』を見ていきましょう。
『木』は木そのものをあらわすのではなく、“木が枝葉を伸ばしてゆくイメージ、新しいものが芽吹くイメージ”と考えます。
伸びやかなイメージ。
成長をあらわします。

春に多いトラブル

春は肝の気が滞りがち

肝は『木』の特性を持つので、木々のように伸び伸びと全身の気を巡らす機能を持ち、抑鬱を嫌う特性があります。

体において春は「肝」の働きが活発になる季節です。
「肝」はストレスの影響を受けやすいのが特徴の臓器です。
ストレスが溜まると、精神情緒や自律神経が乱れやすくなります。
そのため、怒りっぽい、イライラ、気分が落ち込む、憂鬱など気分の浮き沈みといった症状が目立つようになります。
また、癲癇などの持病を持つペットでは、春に発作が多くみられることもあります。

春は目のトラブルも

「肝」にトラブルがあると「目」にも変化があらわれます。
目ヤニが多くなる、ショボつく、ドライアイ、視力減退などの「目」に関わる症状・疾患があらわれやすくなります。

春にみられるその他のトラブル

「肝」に貯蔵されている血液(肝血:かんけつ)が不足すると、「筋(腱のこと)」の栄養が不足するため、足のつり、手足がピクピクと痙攣するなどがあらわれたり、「爪」がもろく割れやすくなります。

春の健康管理

の健康管理のポイントは、肝臓のサポートストレス発散です。

肝機能のサポート

春は冬の間に体に溜まった老廃物を外に出そうとするため、肝臓の代謝が活発になります。
そのため、肝臓には負担がかかってしまいます。
肝機能をサポートするには、『食事中の脂肪分を減らす』『水分摂取を促す工夫をする』『腸内環境を整える』などがあげられます。

低脂肪で高繊維性のフードへの変更、ウェットフードの併用、こまめな水分補給や乳酸菌入りのおやつなどを取り入れてみましょう。
フードを変更したり整腸剤やサプリメント、漢方を希望する場合は動物病院に相談をしましょう。

春にお勧めの食材

基本的に季節の旬の食材には季節の体調をサポートする成分が含まれています。
春の食材は肝臓の解毒を促すのに役立つものが多くあります。

キャベツには補五臓作用があり、茹でてみじん切りにして与えるとよいでしょう。
セロリには平肝作用があり、生のまま薄く切って与えます。
他にも春菊、さつまいも、蓮根などは茹でてみじん切りにしたり、蓮根は擦ってあげるのもよいでしょう。

『以蔵補蔵(いぞうほぞう)』といって、不調の部分と同じ臓器を食べることでその部位の働きを助けるという考え方が薬膳にあります。
補肝作用のある鶏レバーを茹でて与えるのもよいでしょう。

いずれの食材もたくさん摂りすぎるのは体にとって逆効果になります。
ティースプーン1杯と少量を普段の食事に混ぜる程度にしておきましょう。
また、アレルギーや基礎疾患がある場合には、獣医師に相談をしましょう。

居心地のよい環境作り

春は1日の中でも寒暖差があるため、こまめに室内の温度をチェックしましょう。
来客や留守番などが増え、環境変化が多くなってもペットが安心できる場所を確保してあげましょう。

空気清浄機を活用

人の花粉症のように目ヤニや充血、くしゃみや皮膚の痒みなどの症状に悩まされることもあります。
空気清浄機を活用することで、室内の花粉やハウスダストへの対策をしましょう。
また、症状がひどい場合は早めに動物病院を受診しましょう。

生活のリズムの変化に少しずつ慣らす

春からの新生活で飼い主さんの不在が増えたりする場合には、急な変化にペットが戸惑わないように前もって準備をしましょう。
短時間から留守番やケージに入る練習をしたり、1人の時間を楽しめるように知育玩具などで工夫をしましょう。
その際に、サプリメントや漢方薬でメンタル面のサポートをしてあげるのも効果的です。
処方をご希望の際は動物病院に相談をして下さい。

適度な運動

お散歩や室内でペットと一緒に過ごす時間を作りましょう。
適度な運動をすることで、ストレスを発散させてあげましょう。
また、一緒にいる時間は声をかけてあげたり、遊んであげることでコミュニケーションをとることも大切です。

お散歩に行く場合には、ノミ・ダニ・蚊などの虫に対する対策も必要です。
動物病院で適切な薬を処方してもらいましょう。

まとめ

は人もペットも過ごしやすい季節である一方で、新生活などのイベントが多くストレスも多くなる季節です。
そんなに大きく影響される臓器が『肝』です。
『肝』は全身の気血を巡らすという重要な働きをしています。
『肝』はストレスに弱く、『肝』の働きが鈍ると、気血がうまく巡らなくなり、怒りっぽく、イライラしたり、気分が落ち込んだり、精神的に不安定になります。
発作や行動異常などがみられることもあります。
また、目や皮膚にトラブルが起こることもあります。

春の養生『肝の気をうまく巡らせること』
ペットも人も『肝』をケアして、春を健康的に過ごしましょう。

投稿者プロフィール

名取(獣医師)

生まれ変わっても猫と暮らしたい。

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