猫の歯周病について

川崎市中原区の飼い主のみなさま、こんにちは。
武蔵小杉駅からすぐの池田動物病院です。​

「最近、愛猫の口がにおう気がする」
「食事を残すことが増えた」
「口のあたりを気にしている」
そんな様子が見られた場合、それはねこちゃんの歯周病が原因かもしれません。

歯周病は、ねこちゃんにとっても非常に身近な病気です。
特に、高齢のねこちゃんや口腔ケアが難しい性格のねこちゃんでは、気づかないうちに進行しているケースが多くあります。
放置すると歯が抜けるだけでなく、全身の健康に悪影響を及ぼすこともあるため、早期の対処が大切です。

この記事では、ねこちゃんの歯周病について原因・症状・予防法・治療法をわかりやすく解説いたします。

口を大きく開けた猫のイラスト。歯や口内の様子が見える構図で、歯周病の症状やチェックに関する内容に適している。
目次

猫の歯周病とは

ねこちゃんの歯周病は、歯と歯ぐきの間(歯周ポケット)に細菌が侵入し、炎症を起こす病気です。
最初は「歯肉炎」という軽度の状態から始まり、放置すると「歯周炎」へと進行し、最終的には歯を支える骨(歯槽骨)が破壊され、歯が抜け落ちてしまうこともあります。

実は、3歳以上のねこちゃんの約7~8割が歯周病を抱えているともいわれており、非常に身近な病気です。
しかし、ねこちゃんは痛みや不快感を隠す傾向があるため、飼い主さまが気づいた時にはすでに進行しているケースも珍しくありません

歯周病の原因

歯周病の主な原因は、プラーク(歯垢)と歯石です。

  • プラーク(歯垢)
    食べかすに含まれる細菌のかたまり。
    柔らかく白い状態。

  • 歯石
    プラークが1週間で硬化したもの。
    ザラザラしていて、さらに細菌が付きやすい。

歯周病の進行メカニズム

  • 食べかすや細菌が歯に付着し、プラーク(歯垢)が形成されます。
  • プラークが唾液中のミネラルで石灰化して歯石になります(約7日で形成)。
  • 歯石の上にさらに細菌が付着し、歯ぐきに炎症を引き起こします
  • 炎症が進行し、歯槽骨が破壊されて歯が抜けます

ねこちゃんの唾液はアルカリ性のため、ヒトよりも歯石がつきやすく、1週間もすれば固い歯石に変化することもあります

歯石の表面には細菌が増殖しやすく、慢性的な炎症や悪化を招く原因になります。

猫の歯周病の症状

ねこちゃんの歯周病は、初期ではほとんど症状が出ないこともあります。
以下のような変化に気づいた場合は、歯周病の可能性があります。

猫の歯周病の初期症状

  • ツンとした口臭が強くなる
  • 食欲はあるのにごはんを残す
  • ドライフードを嫌がるようになる
  • よだれが増える、血が混じる
  • 歯ぐきが赤く腫れる、出血する
  • 顔を触られるのを嫌がる
  • 前足で口をかく、こする
  • 片側の歯だけで噛もうとする
  • 歯がグラグラしている、または抜けている

症状の重さには個体差があり、軽度なら歯肉炎で済みますが、重度になると抜歯や全身管理が必要になるケースもあります。

ねこちゃんは我慢強いため、症状が出てきた時にはすでに重症化していることも少なくありません

猫の歯周病が進行すると…

歯周病が進行すると口腔内だけでなく、全身に悪影響を及ぼすことがあります。

歯周病が進行して起こりうる問題

  • 歯槽骨が溶けて歯が自然に抜ける
  • 慢性的な痛みやストレスで食欲低下、体重減少
  • 歯根膿瘍や顔の腫れ
  • 歯の根と鼻腔がつながってしまい、くしゃみや鼻水が止まらなくなる(口鼻瘻管)
  • 歯周病菌が血流に乗って、腎臓・肝臓・心臓に悪影響

当院でも、腎臓病と診断されたねこちゃんの慢性炎症の原因が、実は重度の歯周病だったというケースがありました。
口腔の健康は、全身の健康と密接に関係しています。

猫の歯周病の予防法

歯周病は予防が何より重要です。
ねこちゃんは口を触られるのを嫌がることが多いため、無理のない範囲でできることから始めましょう。

飼い主が猫に歯みがきをしているイラスト。猫のデンタルケアや歯周病予防の重要性を伝える場面に最適。

歯みがき習慣をつける

ねこちゃんの歯みがきは、子猫のうちから慣らしていくとスムーズです。

  • 最初は「お口の周りをさわる」→「お口を開ける」など、簡単なステップを踏みましょう。
  • いきなり歯ブラシからスタートするのは難しいので、お口をさわれるようになったら、ガーゼ綿棒で軽くなでるだけでも効果があります。
  • 酵素入りのデンタルジェルを使うと、より効率的にケアできます。
    指やガーゼに塗って舐めさせてみましょう。
  • 歯みがきシートで奥歯を軽くなでましょう。
  • 最終的には、歯ブラシを使って、歯みがきをしましょう。

最初から歯ブラシを使用するのは難易度が高く、ねこちゃんも歯みがきが嫌いになってしまう可能性もあります。
焦らず、数か月かけてゆっくりと進めましょう。

歯みがきが難しい猫には代替ケア

  • デンタル用トリーツ(噛むことで歯垢を除去します)
  • 飲み水に混ぜるデンタルウォーターの活用
  • デンタルケア成分が配合された療法食の導入

これらはあくまで「補助的な手段」なので、歯みがきと併用していくのがおすすめですが、全くケアをしないよりも、できる範囲で続けることが大切です。

猫の歯周病対策におすすめのケア製品

池田動物病院では、ねこちゃんにも使いやすい以下の製品を取り扱っています。

  • 歯みがきペースト・デンタルジェル
    酵素入りで高い抗菌・抗炎症
    愛猫の好きなテイストのペーストやジェルを、歯ブラシやガーゼなどにつけて、歯みがきが嫌いにならないようにしましょう。

  • デンタルトリーツ
    ねこちゃん用に小さい噛むおやつタイプです。

  • デンタルウォーター
    飲み水に混ぜるだけで簡単にケアができます。

  • 口腔内善玉菌サプリメント
    タブレット型、パウダー型があり、フードや飲み水に混ぜて与えられます。

  • デンタルケア療法食
    ヒルズ等から出ています。
猫用のデンタルジェル、歯ブラシ、歯みがきおやつのイラスト。歯周病予防のためのケアグッズ紹介に適している。

ねこちゃんの性格や飼い主さまの生活スタイルに合わせたケアプランをご提案しています。
製品の使い方や選び方については、診察時にお気軽にご相談ください。

猫の歯周病の治療法

歯石がついてしまった場合、自宅でのケアでは除去できません。
この場合は、動物病院での全身麻酔下のスケーリング(歯石除去)が必要です。

病院での主な処置

  • 超音波スケーラーによる歯石除去
  • 歯周ポケットの洗浄・消毒
  • グラグラしている歯の抜歯
  • 歯の表面の磨くポリッシング処置(歯石の再付着防止)
  • 歯周病治療薬の処方

ねこちゃんの場合、麻酔のリスクを心配される飼い主さまも多いですが、当院では術前に血液検査心機能評価を行い、安全な麻酔管理を徹底しています。
また、高齢のねこちゃんや持病のあるねこちゃんにも対応可能ですので、まずはご相談ください。

猫の歯周病のまとめ

ねこちゃんの歯周病は、最初は小さなサインから始まり、気づかないうちに進行します。
放置すると歯を失うだけでなく、全身の健康に影響を及ぼす可能性がある怖い病気です。
ただし、早期に気づいて適切なケアを行えば、進行を防ぐことは十分に可能です。

「最近、口臭が気になる」「ごはんの食べ方が変わった」など、些細な変化も見逃さず、できるところから歯周病予防を始めてみましょう

「うちの子は歯磨きができない」
「何から始めたらいいかわからない」とお悩みの飼い主さまへ。

池田動物病院では、ねこちゃんにやさしい診察環境で、性格や生活スタイルに合わせた無理のないケア方法をご提案しています。

知らない人やほかの動物が苦手なねこちゃんのために、月4回ほど、ねこちゃん専用診療予約時間も設けております。
ぜひご活用ください。

愛猫のお口の健康が気になる飼い主さまは、お気軽にご相談ください。

投稿者プロフィール

菊地(さ)愛玩動物看護士

ペンギンが好きです。ジェンツーペンギンも好きですが、アデリーペンギンが一番のお気に入りです。

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