ネコちゃんの飼い主さんが抱える問題の一つに、「猫があまり水を飲んでくれない。」というものがあります。
猫はもともとあまり水を飲まない動物ですが、水分不足により病気になってしまうこともあります。
ネコちゃんへの理解を深め、水を飲ませる工夫をしてみましょう。
猫の祖先と水
猫があまり水を飲まないのは、猫のルーツに関係があります。家猫の祖先は乾燥地帯に生息していました。
砂漠では水が貴重であったため、猫の体はわずかな水でも生き抜くことができるように進化してきたのです。
水はどうして体に必要か
猫の体のおよそ60%が水分でできています。
水には体内の毒素を薄めたり、排尿により毒素を体外に排泄する役割があります。
体の水分が不足すると体内の毒素を処理できなくなり、体に異変が起こります。
水分不足で猫に起こる病気
体の水分が不足し、脱水状態になると食欲が落ちたり、動きが鈍くなるなどの変化が見られます。
また、体の水分の不足により、排尿量が減り、腎臓への負担が多くなり腎臓病を起こしたり、膀胱炎や尿路結石などの泌尿器関連の病気にかかりやすくなります。
さらに、体の水分が10%以上失われれば、命に係わる危険もあります。
猫の一日の水分摂取量の目安
ネコちゃんの一日に必要とされる水分摂取量は、年齢、体重、運動量や季節など環境要因によって異なります。
また、水分を摂取できる方法として、飲水以外にも食事からの補給される分も考慮される必要があり、こちらは食事内容によって含まれる水分量が異なってきます。
体重別にした一日の水分摂取量の目安を参考にして、食事に含まれる水分量を差し引きし、飲水に必要と考えられる水分量を導き出しましょう。
1 水分摂取量の体重別目安
ネコちゃんが一日に必要な水の量は、体重1kgあたり40ml程度が適切と言われています。
2 ドライフードとウェットフードの水分量
ドライフードの約10%、ウェットフードの約80%が水分です。
ドライフードをメインで与えている場合には、ウェットフードを一緒に与えるようにすることで食事から摂取する水分量を増やすことができます。
ただし、ウェットフードの与え過ぎは口臭の原因となることがあるので注意しましょう。
猫に与えるのに適した水
ネコちゃんに水を与える際に、水道水とミネラルウォーターのどちらがよいかで迷うことがあります。
ネコちゃんに与える水の条件として「ミネラル分の少ない軟水」「細菌が繁殖しにくい水」であることがあげられます。
日本の水道水のほとんどは、消毒され、かつ軟水なので、この条件を満たしています。
カルキ臭や塩素臭が気になる場合には、一度沸騰させて湯冷ましを与えるなどの工夫をしてみましょう。
一方、カルシウムやマグネシウムなどのミネラルを猫が多く摂取すると、尿路結石の発症リスクが高まります。
そのため、ミネラル分を豊富に含むミネラルウォーターは猫に不向きと言えます。
ミネラルウォーターを選ぶ場合には、動物用のものを使用するか、成分表示を確認し、カルシウムやマグネシウムの含有の少ない「軟水」にした方がよいでしょう。
猫に水を飲ませる工夫
- 器
器はネコちゃんによって好みが違います。
器の素材や形状は様々ですので、飲みやすい器を探してみましょう。
ネコちゃんはヒゲが水に触れるのを嫌がるため、平面が広い器を好む傾向があります。
お水の器の高さは、ご飯の器と同じくらいの高さが理想的です。
水道の蛇口からぽたぽた垂れる水を飲むのが大好きなネコちゃんには給水ボトルが合っているかもしれません。
また、流れている水を好むネコちゃんもいるので、循環式の給水機を試してみるのもよいかもしれません。
- 水飲み場
水飲み場は、猫の頭数分+1個、もしくは猫の頭数×2個置くことをおすすめします。
食事の後に水を飲めるように、食事の器の隣に水飲み場を用意したり、人目を気にせず落ち着いて水が飲めるような場所に水飲み場を用意してあげましょう。
- 食事での水分補給
水だけでは飲んでくれない子には、スープやゼリー状の補水液を与えてもよいでしょう。
また、ドライフードに比べて水分量の多いウェットフードもおすすめです。
いつもドライフードを与えている場合には、ドライフードにウェットフードを混ぜる工夫をしてみましょう。
まとめ
猫はあまり水を飲まない動物ですが、水分の摂取不足で体調不良を招くこともあります。
特に多いのは膀胱炎、尿路結石、腎臓病などの泌尿器系のトラブルです。あまり水を飲まずに濃い尿を排泄するために、泌尿器系に負担がかかってしまいます。
ネコちゃんの健康を守るために、お水の器や水飲み場の改善、ウェットフードや経口補水液を取り入れたりすることで、水分摂取ができるよう工夫をしてみましょう。
<院長コメント>
猫の習性として水を飲まないことは知られていますが、血液検査を行うと脱水を起こしている猫が多く存在します。脱水状態は腎臓に悪影響を及ぼすため、生活環境の見直しで水分摂取を促しましょう。
プロフィール
名取(獣医師)
生まれ変わっても猫と暮らしたい。