川崎市中原区の飼い主の皆様こんにちは。武蔵小杉駅からすぐの池田動物病院です。
膿皮症は様々な原因により、細菌が皮膚で増えてしまう皮膚病です。わんちゃんでは比較的多くみられます。
今回、犬の膿皮症について原因や現在行われている治療法などを説明していきたいと思います。
1|犬の膿皮症とは
まず、皮膚は全体重の10%を超える割合をしめている体の中でも最も大きな臓器です。通常、皮膚にはバリア機能があり皮膚を守っています。膿皮症とは、様々な原因によりこのバリア機能が低下することで発症する皮膚病です。皮膚は一番外側から表皮、真皮、皮下組織の3層からなります。
細菌感染の場所により、膿皮症は以下の3つに分類されます。
1-1|表面性膿皮症
一番外側の表皮表面での細菌増殖による膿皮症で軽度の皮膚炎
1-2|表在性膿皮症
表皮や毛包内での細菌増殖による膿皮症
1-3|深在性膿皮症
真皮や皮下組織などの深部での細菌増殖による膿皮症で痛みを伴うことの多い皮膚炎
2|犬の膿皮症の症状
2-1|初期症状
膿皮症では以下の症状がみられます
・ 皮膚の赤み
・ 皮膚の赤いぷつぷつや白いぷつぷつ
・ 皮膚のかゆみ
・ 皮膚のかさぶたや脱毛
2-2|進行した時にみられる症状
進行すると以下の症状がみられます
・ 皮膚が黒っぽくなる(色素沈着)
・ 皮膚の痛み
・ 皮膚が腫れてジュクジュクして出血などを伴う
3|犬の膿皮症の原因
原因菌としてはStaphylococcus pseudintermedius(皮膚に常在するブドウ球菌)がほとんどです。深在性膿皮症では大腸菌や緑膿菌などが原因となることもあります。
皮膚が正常であれば感染は成立しませんが、皮膚のバリア機能が低下することで発症します。
皮膚のバリア機能が低下する原因を下記に示します
・ アレルギーによる皮膚炎
・ 皮膚の物理的損傷
・ 内分泌疾患(クッシング症候群、甲状腺機能低下症などのホルモン性疾患)
・ 外部寄生虫感染
皮膚自体の問題が主原因となる場合もあれば、内分泌疾患などのように全身状態に影響を及ぼす疾患の一端として皮膚にも症状がみられているケースもあります。
4|膿皮症にかかりやすい犬種
膿皮症は最も多い皮膚病であるためすべての犬種で注意が必要ですが、その中でも皮膚のバリア機能を低下させてしまう、アレルギーや内分泌疾患にかかりやすい下記に示す犬種では特に注意が必要です。
・ 柴犬
・ ウエストハイランドホワイテリア
・ ダックスフンド
・ ミニチュアシュナウザー
5|犬の膿皮症の治療法
膿皮症は細菌感染の場所により3つのタイプに分けられますが、治療法もそれぞれ異なります。
5-1|表面性膿皮症の治療法
患部の毛を刈り消毒薬や抗菌剤を含む外用薬を用いて治療します。
5-2|表在性膿皮症の治療法
患部が局所であれば表面性膿皮症と同様に治療します。全身性に広がっている場合には抗菌薬の内服や注射、シャンプーなどを用いて治療します。
5-3|深在性膿皮症の治療法
抗菌薬の内服や注射等のほかに皮膚のバリア機能が低下する原因となる別の疾患があれば、その治療を同時に行うことがあります。
- ―治療費の例―
- 膿皮症の治療は、症状の範囲や感染部位によって治療が異なります。
- ・シャンプー剤は薬用シャンプー1本2,090円~
- ・局所外用薬は1本2,200円~
- ・抗生剤の内服薬は2週間服用した場合、3,520円~
程度の費用がかかります。
6|犬の膿皮症の予防
6-1|シャンプーを用いた予防
膿皮症は高温多湿の時期や、環境により起こりやすくなる皮膚病です。そのため、普段からシャンプーを用いて皮膚を清潔に保つことにより予防することが可能です。
シャンプーする際の注意点を下記に示します。
- 使用するお湯の温度は、35℃~37℃を意識する(高温だと皮膚のバリア機能に影響を及ぼす)
- あらかじめ泡立て皮膚をこすらずに、マッサージするようにして皮膚に塗布する
- 泡立てる際のポイントはネットやスポンジを用い空気を含ませるようにすること(ネットは大きな泡を作 るのに適していて、スポンジはきめ細かい泡を作るのに適している)
- うまく泡立てることが困難な場合には、ペットボトルやミキサーなどを用いて泡立てる
- すすぎ残しがあると皮膚への刺激の原因となってしまうため、しっかりとすすぐ
- 皮脂の多いわんちゃんでは、シャンプーの効果を十分に発揮出来るように、シャンプー前にクレンジング や下洗いシャンプー、入浴剤などを使用する
- シャンプーのみでは皮膚が乾燥してしまうため、わんちゃんに合った保湿剤を併用することが重要(保湿剤は剤形のタイプにより使用感や皮膚への刺激性なども異なるため、ご相談ください。)
6-2|療法食を用いた予防
他にも、皮膚のバリア機能が低下することで膿皮症になりやすくなるため、皮膚を作る材料になるフードを変えることも予防になります。皮膚の治療に特化した療法食が各会社から販売されていますので、皮膚の弱いわんちゃんはぜひ試してみてください。
また療法食選びでお困りの際は、獣医師以外にも療法食メーカーよりフードアドバイザー資格を得たスタッフもおりますので、お気軽にご相談ください。
7|まとめ
今回は犬の膿皮症について、症状、原因、治療法、予防についてまとめてみました。膿皮症はわんちゃんの皮膚病の中でも多い疾患です。原因が皮膚のみではなく、内分泌疾患などの全身性の疾患が原因に隠れていることもあるため、日頃から全身状態に気を配ることも重要です。また身近なシャンプーや療法食で予防や治療が可能なこともあるので、試してみてください。
当院では西洋医学だけでなく東洋医学も取り入れており、漢方薬による皮膚病・体質改善治療も行っております。お気軽にご相談ください。
鈴木(獣医師)
動物と飼い主様の笑顔のために日々精進してまいります。よろしくお願いいたします。