東洋医学で読み解く!犬・猫の梅雨〜夏の体調管理【長夏の養生】

川崎市中原区の飼い主のみなさま、こんにちは。
武蔵小杉駅からすぐの池田動物病院です。

梅雨の季節が近づいてきました。
梅雨の時期は東洋医学では『長夏』と呼び、1年で湿度が最も高くなる時期となります。
この時期は湿気が胃腸系に影響することが多くなります。
ペットたちも食欲不振や下痢、嘔吐などの胃腸系のトラブルが多い傾向にあります。

今回は、東洋医学の視点から「長夏」の特徴や犬・猫が快適に過ごすための養生法についてお話をします。

レインコートを着た犬と猫が梅雨の雨の中に立っているイラスト。アジサイと一緒に、湿気の多い長夏の季節感を表している。
目次

長夏とは?

中国では夏の終わりから秋の湿度が高い時期を「長夏(ちょうか)」といいます。
日本では、中国大陸にはない梅雨の時期がありますので、梅雨の時期を「長夏」とすることが多いのです。
この時期は「湿」への対策が重要となります。

長夏と湿邪

五行学説と長夏

東洋医学には、あらゆるものを『木・火・土・金・水』(もく・か・ど・こん・すい)の5つの要素に分類して考える、「五行学説」という基本の考え方があります。

この「五行学説」で、季節や臓器との関係を見ていきます。

五行分類表

 
五季長夏(梅雨)
五気湿
五臓
五腑小腸大腸膀胱
五官
五体皮毛
五華
五志悲・憂驚・恐
五色

長夏は五行学説では『土』に属し、脾や胃との関係が深いとされます。
『土』は、植物の種を育て、動物が生活するための土台となります。
土の特性は、生成・発育などのイメージです。

湿邪とは

さまざまな体調不良を引き起こす過剰な湿気のことを東洋医学では、『湿邪(しつじゃ)』と言います。

湿邪の特徴

  • 重たく停滞しやすい
  • 下半身や関節にたまりやすい
  • 症状が慢性化しやすい

長夏と湿邪

長夏(梅雨)の時期は、夏に向けて気温が高くなるだけでなく、湿気が多くなります。
高温多湿な環境により、湿邪が体内に入り込みやすく、消化器系や皮膚、関節に不調を起こすリスクが高まります。

湿邪による体調トラブル

『脾』は湿邪が苦手

東洋医学における『脾』は、西洋医学での脾臓と異なり、主に消化機能に関連した働きをするものと解釈します。
消化吸収や水分代謝、エネルギー生成を担う重要な働きをしています。
『脾』は、湿度が苦手で、余分な水分や老廃物などの湿邪が体の中に溜まると、脾の働きが鈍り、さまざまな体調不良を引き起こします。

胃腸系トラブル

湿邪がおなかに溜まると、消化器系のトラブルを引き起こしやすくなります。

  • 食欲不振、胃もたれ
  • 嘔吐、軟便や下痢

また、梅雨時期は、食べ物にカビが、生えやすくなったりもするので、傷んだ食べ物を口にしてしまうことでの嘔吐や下痢(食中毒)なども起こしやすくなります。

皮膚のトラブル

湿気が皮膚表面に停滞すると、皮膚疾患を引き起こしやすくなります。

  • 外耳炎や皮膚炎の悪化
  • 皮膚のべたつきやジュクジュクした湿疹
  • 特に顔のしわが多い短頭種(パグやフレンチブルドッグなど)は注意

関節や全身のトラブル

  • 跛行、関節痛の悪化(関節炎や持病を持つ高齢動物に多い)
  • 浮腫み、だるさなど

体内に湿邪がこもると、気血の流れが滞り、慢性的な不調の原因になります。

熱中症のリスク

  • 湿度が高いとパンティングによる熱放散がうまくできず、体温が上昇
  • 運動後やお散歩時に注意

梅雨時期でも熱中症対策は欠かせません。

雨続きで、お外で思いきり遊ぶことができないとストレスを感じることも多くなります。

長夏の健康管理

『脾』を元気に保つことが、長夏(梅雨)時期の体調管理のカギとなります。

脾のサポート

「脾」は元気に保つことが、梅雨時期の体調管理のカギです。

脾は単に、飲食物の消化と吸収を行う所ではありません。
最も重要な働きは、飲食物から『気(き)』や『血(けつ)』などの体を動かすエネルギーや栄養素を作り出すことです。
中医学では、『脾』は『生命力』を支える重要な臓器です。

  • 規則正しい生活リズムを保つ
  • 消化に良い温かい食事を心がける
  • 必要に応じて漢方や鍼灸の力を借りる

『脾』の働きが整うことで、体の水分代謝や免疫力も安定します。

長夏(梅雨)にお勧めの食材

  • 豆類(小豆、えんどう豆、空豆など)
    利水作用があり、むくみの改善に有効です。
    薄皮ごと煮て、潰して与えるとよいでしょう。

  • 根菜類(さつまいも、じゃがいも、カボチャ、にんじん)
    脾の働きを補い、強めてくれます。
    蒸して、普段のフードにトッピングをしてあげるとよいでしょう。
サツマイモやカボチャ、豆類、にんじんなどのイラスト。長夏の時期に体調を整えるための養生食材を示している。

湿気対策

  • レインコートで濡れ対策
  • 散歩後のしっかり乾燥
  • 除湿器やエアコンを活用

適度な運動でストレス発散

  • 雨の日は知育トイやおもちゃを活用
  • 短時間でも運動を取り入れる

お散歩の好きなワンちゃんにとって、散歩をすることは健康維持やストレス解消にとても大切なものです。
雨続きでいつものようにお散歩に行かれない場合は、室内遊びを充実させてあげましょう。

まとめ

長夏(梅雨)の時期は、湿気が多く体に負担がかかりやすい季節です。
消化器系や皮膚、関節、そして熱中症にも注意が必要です。

東洋医学の視点からは、「脾」を元気に保つことがこの季節の体調管理のポイントとなります。

また、ワンちゃんやネコちゃんの体調に変化を感じたら、早めに動物病院に相談をしましょう。

投稿者プロフィール

名取(獣医師)

生まれ変わっても猫と暮らしたい。

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