【獣医師監修】犬の外耳炎|耳をかゆがる・におう…そのしぐさ、外耳炎かも?症状・原因・治療法を解説

川崎市中原区の飼い主のみなさま、こんにちは。
武蔵小杉駅からすぐの池田動物病院です。

最近、わんちゃんが耳をかゆがったり、頭を振るしぐさが増えていませんか?
それは「外耳炎」という耳の病気かもしれません。

わんちゃんの外耳炎は比較的よく見られる疾患で、早期に治療を開始すれば短期間で改善することが多いです。
しかし、放っておくと慢性化したり、再発を繰り返してしまうケースも少なくありません。

この記事では、外耳炎の主な症状や原因、動物病院で行う治療法から、ご家庭でできるケア、再発予防のポイントまで、わかりやすく解説いたします。

「ちょっと耳が気になるな」と感じたら、ぜひ最後までご覧ください。

耳をかゆがっている様子のわんちゃん(外耳炎の初期症状)
目次

外耳炎とは?

耳は外側から耳介、外耳、鼓膜、中耳、内耳に分かれていて、耳介から鼓膜までの外耳道という所に炎症が起きている状態を外耳炎といいます。

耳垢は耳の中の分泌物と新陳代謝で剥がれ落ちた角質が混ざり合ってできます。

健康な耳介では耳垢を外に運び出すため、大量の耳垢がたまってしまうことはありません。
しかし、炎症が起きると正常な働きが出来なくなるので、耳垢がたまっていきます。

こんな症状が見られたら要注意!犬の外耳炎のサイン

耳を頻繁にかく、頭を振る

外耳炎の初期症状として最も多く見られるのが、わんちゃんが耳を頻繁にかいたり頭をブルブルと振るしぐさです。
これらは耳の中に違和感かゆみ痛みを感じているサインかもしれません。
特に片耳だけを気にする場合は、その耳にトラブルが起きている可能性が高いです。

耳からのにおいや耳垢が増える

普段と比べて耳から強いにおいがする、耳垢の量が急に増えた色が濃くベタついている…このような変化も外耳炎の兆候です。
とくに茶色や黒っぽい耳垢が出ている場合、マラセチアという真菌細菌感染が疑われます。

耳の中が赤い、触ると痛がる

耳の中が赤くなっていたり、触れようとすると嫌がる・鳴くなどの反応があるときは、炎症が進行している可能性があります。
放っておくとさらに悪化し、耳道が腫れてしまうこともあるため注意が必要です。

耳が片側に傾いている

片耳が垂れたり、わんちゃんが首を傾けた姿勢をとるようになった場合も、耳の中に異常があるサインです。
重度の場合は平衡感覚に影響が出て、ふらつきや嘔吐を伴うこともあります。

なぜ外耳炎になるの?主な原因

耳の構造や体質(垂れ耳・耳毛が多い犬種など)

わんちゃんの耳はL字型になっており、通気性が悪く湿気がこもりやすい構造をしています。
とくに垂れ耳や耳毛が密集している犬種は、耳の中が蒸れやすく、細菌や真菌が繁殖しやすい環境になります。

外耳炎になりやすい犬種

外耳炎はどの犬種でも起こり得る病気ですが、特に以下のような犬種は注意が必要です

  • ダックスフンド
  • アメリカンコッカースパニエル
  • ゴールデンレトリバー
  • ラブラドールレトリバー
  • キャバリア
  • フレンチブルドック
  • パグ
  • トイプードル

これらの犬種は「垂れ耳」「耳毛が多い」「皮脂の分泌が多い」「アレルギー体質」などの要因を持っており、耳の中が蒸れやすく外耳炎になりやすい傾向があります。

わんちゃんの犬種特性を理解したうえで、日頃のケアや早期チェックを心がけましょう。

細菌や真菌(マラセチアなど)の感染

耳の中の常在菌が異常繁殖すると炎症を引き起こすことがあります。
特にマラセチアという酵母菌は、独特なにおいとベタつく耳垢を出し、慢性化の原因にもなります。

耳ダニ(ミミヒゼンダニ)などの寄生虫

耳ダニは、主に子犬や多頭飼育の環境で感染しやすい寄生虫で、激しいかゆみと黒い耳垢が特徴です。
感染力が強く、他のペットにも広がるおそれがあるため早期の駆除が重要です。

アレルギー(食物・環境)

皮膚と同じように、耳の中もアレルギーの影響を受けやすい部位です。
季節性の花粉やハウスダスト、食べ物などが原因で外耳炎を引き起こすこともあります。

脂漏症やホルモン疾患、異物混入など

皮脂の分泌が多い体質やホルモンの異常も、外耳炎を悪化させる要因になります。

お散歩中に草の種や砂が耳に入ることで傷がつき、炎症を起こすケースも見られます。
シャンプー後に水が耳の中に入ってしまい、湿度が上がり細菌や真菌が増加したり、残った水が刺激となって炎症を引き起こすこともあります。

できもの

外耳道にできものが出来ると通気性が悪くなったり、耳道を塞いで耳垢が外に出にくくなり、細菌や真菌が増殖し外耳炎を引き起こします。

どうやって治療するの?動物病院での対応

耳の検査(耳鏡・細菌検査・培養など)

まずは耳の中の状態を詳しく確認するために、耳鏡を使って観察します。
必要に応じて、耳垢を採取し、顕微鏡で細菌や真菌の有無を調べるほか、培養検査を行うこともあります。
原因を正確に特定することで、効果的な治療方針を立てることができます。

犬の耳の中を診察するための耳鏡(外耳炎の診察に使用される器具)

耳の洗浄(専用薬液を用いたクリーニング)

耳の中に溜まった汚れや炎症物質を取り除くために、専用の洗浄液を使って耳のクリーニングを行います。
汚れをしっかり取り除くことで、薬が耳の奥まで届きやすくなり、治療効果が高まります。

点耳薬・内服薬による治療

外耳炎の原因に応じて、抗菌薬・抗真菌薬・消炎剤などが含まれた点耳薬を使用します。
場合によっては、内服薬を併用することで炎症やかゆみを早く抑えることができます。

『耳を触らせてくれないので、自宅で点耳や耳掃除はムリ!』という方には、病院で一度点耳するだけで1週間から最長1か月以上も効果が続く点耳薬があります。
嫌がる子に点耳や耳掃除をするのは、愛犬と飼い主さまの両方にとってストレスとなるので、無理をせずご相談ください。

慢性化・重度の場合の処置(耳道切除など)

炎症が長引いて耳道が狭くなっていたり、繰り返す外耳炎で薬が効きにくくなっている場合は、外科的な処置(耳道切除術など)を検討する場合もあります。
手術の必要性は、わんちゃんの症状や生活の質を考慮して判断します。

再発させないために!家庭でできるケアと予防

耳の定期チェックとやさしいケア

毎日のスキンシップの中で、耳のにおいや汚れの有無をチェックしてあげましょう。
異変に早く気づくことができれば、悪化する前に対処できます。

自宅でお耳掃除をする場合は、耳洗浄液(イヤークリーナー)コットンなどにつけて、指の届く範囲で優しく拭くようにしましょう。

間違ったやり方をするとそれが原因で外耳炎を引き起こしてしまうこともあります。

やりすぎは耳道内の皮膚を傷つけて、かえって外耳炎を引き起こすことがあります。 

綿棒は耳介の窪みなどの汚れを取るのに適していますが、耳の中の皮膚を傷つけたり、耳垢を奥に押し込んでしまうこともあるのでオススメしません

耳洗浄液は市販のものでも構いませんが、なるべく低刺激のものを選びましょう。

当院では用途に合わせて数種類のイヤークリーナーをご用意しておりますので、お気軽にご相談ください。

犬用の耳洗浄液3種類(外耳炎の予防・治療に使用されるケア用品)

耳毛処理やシャンプーの工夫

耳毛が多いわんちゃんは、定期的なカットで通気性をよく保つことが大切です。
また、シャンプー後に耳に水が残らないようにすることで、湿気による菌の繁殖を防ぐことができます。

体質やアレルギーに合った食事管理

外耳炎を繰り返す子の中には、食物アレルギーが関係しているケースもあります。
皮膚にやさしいフードへの切り替えや、栄養バランスの見直しによって、耳のトラブルが改善することもあります。

治療後も定期的に通院・経過観察を

一度良くなっても、完全に炎症が引いていなければすぐに再発してしまう可能性があります。
症状が落ち着いた後も、動物病院で定期的に耳の状態を診てもらうことをおすすめします。

自宅で観察できる範囲は限られていますので、いつもより汚れが多い、においがある、赤みやかゆみがある場合は病院を受診しましょう。

よくある質問Q&A

外耳炎でよくいただくご質問にお答えいたします。

耳掃除はどのくらいの頻度でやるべき?

健康なわんちゃんの場合、月に1〜2回程度の耳掃除で十分です。
外耳炎の治療中や再発しやすい子は、獣医師の指示に従って頻度を調整しましょう。
やりすぎも逆効果になるため注意が必要です。

治療にはどれくらいの期間がかかる?

軽度の外耳炎であれば、1〜2週間ほどで改善することが多いですが、慢性化している場合は数か月かかることもあります。
完治を目指すには、途中で治療をやめずに継続することが大切です。

点耳薬を嫌がるときの対処法は?

投薬を嫌がるわんちゃんには、リラックスしたタイミングで、優しく声をかけながら行いましょう。
無理せず少しずつ慣らすことがポイントです。
当院では投薬方法のアドバイスも行っています。

再発しやすい子の特徴はある?

垂れ耳や耳毛が多い犬種、アレルギー体質、脂漏症のある子は外耳炎を繰り返しやすい傾向にあります。
早めのケアと予防がとても大切です。

池田動物病院の外耳炎治療の特徴

症状に応じたオーダーメイド治療

わんちゃん一頭一頭の症状や体質に合わせて、最適な治療を提案します。
状態に応じて検査やお薬の内容を調整し、早期改善と再発防止を目指します。

検査結果に基づいた薬の選定と処置

耳垢の顕微鏡検査や細菌培養の結果をもとに、適切な点耳薬や内服薬を選びます。
見た目だけで判断せず、根拠に基づいた治療を行うことで高い治療効果が期待できます。

必要に応じて皮膚科・東洋医学とも連携

慢性の外耳炎やアレルギーを背景に持つわんちゃんには、皮膚科や東洋医学(漢方・鍼灸)との併用治療もご提案可能です。
症状を総合的にとらえてケアいたします。

再発予防までしっかりサポートします

治療して終わりではなく、飼い主さまと一緒に予防とケアまで取り組みます。
おうちでの耳掃除や食事管理についてもお気軽にご相談ください。

まとめ

今回はわんちゃんに多い外耳炎について症状とケアを紹介いたしました。 

外耳炎はどのわんちゃんにも起こる病気で、放っておくと中耳炎・内耳炎を引き起こし、治療期間も長くなり、とても大きな苦痛を負わせる深刻な病気です。

「耳をさわられるのを嫌がるので掃除出来ない」
「どのように掃除したらよいか分からない」
という方も多いと思います。

耳掃除を嫌がる子に無理矢理するのは、愛犬と飼い主さまの両方にストレスとなり、信頼関係を壊してしまう場合もあります。

そんな時は無理せず病院で定期的な耳のチェック・掃除を行いましょう。
嫌なことは病院にお任せください!

日頃から耳のチェックを行い、外耳炎の予防、早期発見を心がけましょう。

- 院長コメント -

当院では外耳炎治療薬として、本文で書かれているような最長で1か月以上効果が持続する点耳薬も取り揃えております。
耳を触られることが嫌いなわんちゃんも無理をせずに治療ができますので、是非ご相談下さい。

また、耳鏡による外耳道の観察はもちろん、さらに耳道奥の治療や検査に欠かせない耳内視鏡(ビデオオトスコープ)を用いた診察も行っております。

この記事の執筆・監修 
執筆:菊地(さ) 愛玩動物看護師
監修:名取 獣医師

投稿者プロフィール

菊地(さ)愛玩動物看護師

ペンギンが好きです。ジェンツーペンギンも好きですが、アデリーペンギンが一番のお気に入りです。

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