【獣医師監修】ハリネズミの腫瘍|症状・治療法・再発予防【川崎市 池田動物病院】

川崎市中原区の飼い主のみなさま、こんにちは。
武蔵小杉駅からすぐの池田動物病院です。

ここ数年、ハリネズミさんをペットとして迎えるご家庭が川崎市内でも増えてきました。

ハリネズミさんは可愛らしい見た目の反面、腫瘍の発生率が高い動物です。
早期発見と適切な治療が、回復の大きな鍵となります。

ある日突然、身体の一部が腫れていたり、歩き方に違和感が出たりして来院されるケースが当院でも増えています。

この記事では、ハリネズミさんの腫瘍について、症状や原因、診断方法、治療の流れ、再発予防までを解説いたします。

腫瘍のあるハリネズミ
目次

ハリネズミの腫瘍とは?悪性腫瘍が多い理由

ハリネズミさんにできる腫瘍は、良性と悪性に分類されますが、特に悪性腫瘍の発生頻度が高いのが特徴です。
アメリカで行われた調査では、飼育されているハリネズミさんのうち約53%に腫瘍性疾患が見られたという結果もあります。

ハリネズミの主な腫瘍の種類と特徴

ハリネズミさんに多い代表的な腫瘍の種類は以下の通りです。

  • 皮膚腫瘍
    扁平上皮癌、線維肉腫などがあります。

  • 乳腺腫瘍
    特に女の子のハリネズミさんに多く見られます。

  • 子宮腫瘍
    高齢の女の子に多く、出血を伴うことがあります。

  • 口腔内腫瘍
    よだれ、食欲不振、口臭などがあらわれます。

  • 骨肉腫脳腫瘍
    歩行障害、旋回行動、けいれんなど神経症状を引き起こします。

これらの腫瘍は、初期には外見では判断しづらいことが多く、「最近元気がない」「食べる量が減った」「身体の一部にしこりがある」「片足を引きずっている」など、ちょっとした異変が発見の手がかりになることもあります。

ハリネズミの腫瘍が発生する原因

腫瘍が発生する主な要因は次の通りです。

  • 年齢
    まず大きな要因として「加齢」が挙げられます。
    ハリネズミさんの平均寿命は3~5年とされていますが、3歳を超えたあたりから腫瘍のリスクが高まります

  • 遺伝
    遺伝的な素因も関係しており、特定の血統で腫瘍が繰り返し見られるケースもあります。

  • 飼育環境
    ケージ内の衛生状態や食事の内容も重要な要素です。
    不衛生なケージ、運動不足、ストレス過多、脂肪分の多い食事、栄養バランスの乱れ(ビタミン不足)などが腫瘍発生に影響する可能性があると考えられています。

すべての腫瘍を防ぐことは難しいものの、日頃から健康的な環境を整えることでリスクを下げることは十分可能です。

ハリネズミの腫瘍の症状とチェックポイント

ハリネズミさんの腫瘍は初期症状がわかりづらいため、早期発見には日々の観察が鍵となります。
以下のような症状が見られた場合、腫瘍の可能性を疑って早めに受診することをおすすめします。

  • さわるとしこりのようなものがある
  • 歩き方が不自然、片足を引きずる
  • 食欲が落ちている
  • 急に体重が減る
  • よだれが増える
  • 口臭が強くなる
  • おなかや乳腺周辺、性器付近に出血がある

実際に当院では、「最近少し元気がない」「動きが遅くなった」など些細な相談から検査を行い、腫瘍が見つかったケースが複数あります。

元気のないハリネズミ

当院で行うハリネズミの腫瘍の診断方法

当院での診断は以下のようなステップを踏んで行います。

  • 視診・触診
    しこりの確認をします。

  • 血液検査
    内臓の状態や炎症、貧血の有無を確認します。

  • レントゲン検査
    骨や内臓の異常を把握します。

  • 超音波検査
    内臓の腫瘍の特定をします。

  • 細胞診や生検
    必要に応じて、針で細胞を採取し、病理検査に出します。

これらの検査を組み合わせて、腫瘍の種類や進行度、身体の他の部位への影響を把握し、適切な治療方法を選ぶことが可能になります。

診察中のハリネズミ

ハリネズミの腫瘍の治療法

診断結果に基づき、以下のような治療法を提案いたします。

  • 外科手術
    腫瘍を摘出します。
    良性腫瘍や進行前(初期)の悪性腫瘍に対し有効です。
    再発リスクを下げるためにも早期手術が望ましいです。

  • 抗がん剤・内科治療
    手術が難しい症例や、全身状態がわるい個体に対して選択されます。

  • 緩和ケア
    高齢の子や全身状態がわるい子に対して、完治を目的とせず、痛みや苦しみを和らげ生活の質(QOL)を保つ治療です。

症例に応じて、手術と内科療法を併用することもあります。

治療にはリスクもありますが、早期であれば再発の可能性も低く、良好な経過をたどる例も多く見られます。
当院では、飼い主さまと十分に相談し、納得のいく治療プランを提案することを大切にしています。

ハリネズミの腫瘍の再発・転移のリスクと定期検診

腫瘍は摘出しても再発することがあります。
特に悪性腫瘍は、肺や肝臓など他の臓器に転移することも報告されています。
術後半年~1年の間は、月1回の定期検診を行うことで、再発や転移の早期発見が可能になります。

再発率や転移パターンは腫瘍の種類によって異なるため、検診の際にしっかりと状態を把握し、必要に応じて追加検査や治療を行います。

飼い主さまができる予防とチェックリスト

  • スキンシップを通じて身体のしこりや腫れを確認しましょう。
  • 毎日の食事量や排泄の状態を記録しておきましょう。
  • 体重を定期的に測定し、急激な減少に注意しましょう。
  • 3歳を過ぎたら、半年に1回は健康診断を受けましょう。
  • 気になる変化があれば、すぐに獣医師に相談しましょう。

よくある質問(FAQ)

Q. 腫瘍は必ず手術が必要ですか?
A. 腫瘍の種類や進行度によります。早期発見なら手術が有効な場合が多いですが、体調や年齢に応じた治療法を選択します。

Q. ハリネズミは麻酔に弱いと聞きますが大丈夫ですか?
A. 個体差はありますが、事前検査を行い安全性を確保して手術に臨みます。

ハリネズミの腫瘍のまとめ

腫瘍は早期に発見できれば治療の選択肢が広がり、回復の見込みも高まります。
「ちょっとおかしいな」と感じたら、すぐに行動することが何よりも大切です。

当院は腫瘍科に力を入れており、ハリネズミを含むエキゾチックアニマルの診療にも対応しています。
検査、外科、内科、緩和ケアまで包括的な医療体制を整えており、ご家族とペットに寄り添った治療を心がけています。

ハリネズミさんのことに関して、些細なことでもかまいませんので、お気軽にご相談ください。

ハリネズミさんを含むエキゾチックアニマルの診療は、石井院長が担当いたします。
初診の方は、お電話でのご予約をお願いいたします。

この記事の執筆・監修 
執筆:菊地(さ) 愛玩動物看護師
監修:名取 獣医師

投稿者プロフィール

菊地(さ)愛玩動物看護師

ペンギンが好きです。ジェンツーペンギンも好きですが、アデリーペンギンが一番のお気に入りです。

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