うさぎの不正咬合について

川崎市中原区の飼い主のみなさま、こんにちは。
武蔵小杉駅からすぐの池田動物病院です。

「最近、うちのうさぎが牧草を残すようになった」
「口を気にして、何度も前足で触る仕草をする」
こんな変化に気づいた飼い主さまはいらっしゃいませんか?

こうしたサインは、うさぎさんにとって命に関わる「不正咬合(ふせいこうごう)」という病気の可能性があります。

この記事では、不正咬合の症状から原因、治療法、予防法を解説いたします。

目次

うさぎの不正咬合とは

うさぎさんの「不正咬合」とは、上下の歯が正しく噛み合わず、歯が異常に伸びてしまう病気です。
うさぎさんの歯は、一生伸び続ける「常生歯(じょうせいし)」と呼ばれ、自然に削れなければ異常に伸びてしまいます。

何らかの原因でうまく噛み合わなくなると、歯が過剰に伸びてしまい、口腔内を傷つけたり、食事ができなくなったりします。
放置すれば命に関わる病気へと発展するため、早期の発見と対処が重要です。

うさぎの不正咬合の症状

不正咬合の初期段階では、飼い主さまが気づきにくい軽微な症状が見られます。
次のような行動や変化があれば、早めの受診をおすすめします。

○よくある症状

  • 牧草を食べない・ペレットばかり食べる
  • 前足で口元をしきりに掻く
  • よだれが増える
  • 目ヤニや鼻水が出る
  • 体重が減ってきた
  • 食べ物を口に入れてもすぐに落とす

食欲低下と偏食(好き嫌いがはっきりする)

不正咬合の初期には、硬いもの(牧草)を避けて柔らかいペレットばかり食べるようになります。
牧草を食べなくなった場合、かなりの確率で歯に問題があると考えられます。

口元を気にする仕草

前足で頻繁に口を掻く、口元を触られるのを嫌がるといった行動は、口腔内の違和感や痛みのサインです。

目ヤニや鼻水の増加

歯が伸びて鼻腔や涙腺を圧迫すると、目ヤニや鼻水が出やすくなります。
風邪と見分けがつきにくいため、注意が必要です。

これらのサインは「ただの偏食」や「風邪」と勘違いされることがありますが、実は不正咬合が原因だったというケースが非常に多いです。

うさぎの不正咬合の原因

不正咬合の原因はひとつではありません。
以下のような複数の要因が関係しています。

先天的な歯や顎の異常

生まれつき歯の角度や顎の骨格に異常があると、若いうちから不正咬合を発症しやすくなります。

食生活の偏り

牧草の摂取量が少なく、ペレットやおやつ中心の食生活では、自然な歯の摩耗が起きず、歯が伸びすぎる原因になります。

外傷や事故による噛み合わせのズレ

高いところから落ちたり、お顔を強く打ったりすると、顎や歯列がずれてしまい後天的に不正咬合が進行することがあります。

うさぎの不正咬合が引き起こす合併症

うさぎさんの不正咬合を放置すると、さまざまな重篤な症状に発展します。

歯根膿瘍(しこんのうよう)

伸びた歯が歯根に炎症を引き起こし、が溜まる病気です。
顔が腫れる、目が飛び出すなどの症状が見られ、外科手術が必要になることもあります。
治療には長期間かかります。

消化不良と腸閉塞

歯が痛くて食べられない状態が続くと、腸の動きがわるくなり、腸閉塞やうっ滞を引き起こすことがあります。
これらはうさぎさんにとって命に関わる緊急疾患です。

うさぎの不正咬合の治療法

不正咬合の治療には、以下のような方法があります。
うさぎさんの状態により、複数の方法を組み合わせて治療を行います。

歯のトリミング

伸びすぎた歯を専用の機器で削る方法です。
短時間で行えますが、再発しやすいため定期的な通院が必要です。

歯の抜歯

重度の不正咬合や再発を繰り返すケースでは、問題のある歯を抜く処置が選択されることもあります。

食事・生活習慣の改善

不正咬合の再発防止には、食生活と生活環境の見直しが不可欠です。
牧草中心の食生活に戻すことで自然な歯の摩耗を促します。
また、適切なおもちゃや噛み木を与えることも効果的です。

うさぎの不正咬合の予防法

不正咬合は完全に予防できるわけではありませんが、日常のケアで発症リスクを大きく下げることが可能です。

  1. 牧草中心の食事を意識する
    1日あたり体重の2~3倍の牧草を摂取させることで、自然に歯を削ることができます。

  2. 定期的な口腔チェック
    半年に1回程度、動物病院で口の中を診てもらうことで早期発見につながります。

  3. 噛めるおもちゃを与える
    うさぎさん専用の木製おもちゃや咬合グッズで、日常的に歯を削るサポートを行いましょう。

  4. ストレスを減らす環境づくり
    うさぎさんはストレスに弱い動物です。
    静かで落ち着いた空間を用意してあげましょう。

  5. 毎日の観察(食欲や行動)を欠かさない
    「いつもと違う」と感じたら、すぐに獣医師に相談することが大切です。

うさぎの不正咬合のまとめ

うさぎさんの不正咬合は、「ただの食べムラ」や「性格の問題」と思って放置されがちですが、実は命に関わる重大な病気になることもあります。
しかし、早期の発見と治療によって命を救える病気でもあります。

牧草を食べなくなった、口元を気にする仕草が増えた、そんな「ちょっとした変化」が、深刻なサインかもしれません。
「いつもと違うな」と感じたら、早めに動物病院で診てもらいましょう。

投稿者プロフィール

菊地(さ)愛玩動物看護士

ペンギンが好きです。ジェンツーペンギンも好きですが、アデリーペンギンが一番のお気に入りです。

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