犬のクッシング症候群について

川崎市中原区の飼い主のみなさま、こんにちは。
武蔵小杉駅からすぐの池田動物病院です。​

愛犬が最近、水をたくさん飲むようになったり、毛が抜けてきたりしていませんか?
それはクッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)の初期症状かもしれません。

クッシング症候群はホルモン異常による慢性疾患で、放置すると糖尿病・高血圧・免疫力低下を引き起こし、命に関わる可能性もあります。
特に7歳以上のわんちゃんでは発症リスクが高いため、早めの診断と治療が重要です。

この記事では、クッシング症候群の原因・症状・診断・治療法について解説いたします。

目次

犬のクッシング症候群とは?

クッシング症候群とは、わんちゃんの体内でコルチゾールというホルモンが過剰に分泌される病気です。
コルチゾールは、ストレスに対処したり、血糖値を調整したりする重要なホルモンですが、過剰になると身体に悪影響を及ぼします。

特に7歳以上の高齢犬(シニア犬)に多く見られ、放置すると糖尿病・高血圧・免疫力低下などの深刻な合併症を引き起こすこともあります。

犬のクッシング症候群の種類と原因

クッシング症候群には、大きく 3つのタイプ があります。

下垂体性クッシング症候群(約80~85%)

○原因

脳の下垂体(脳の一部)にできる腫瘍が原因で、副腎を刺激されすぎてコルチゾールが過剰に分泌します。

○特徴

全体の約80~85%のわんちゃんがこのタイプに分類されます。

○主に影響を受ける犬種

  • プードル
  • ダックスフンド
  • ビーグル
  • ボクサー
    など

副腎性クッシング症候群(約15~20%)

○原因

副腎にできた腫瘍がコルチゾールを過剰に分泌します。

○特徴

全体の約15~20%のわんちゃんが該当します。
手術での摘出が可能なケースが多いです。


○主に影響を受ける犬種

  • ジャーマン・シェパード
  • ラブラドール・レトリーバー
    など

医原性クッシング症候群(まれ)

○原因

長期間のステロイド投与による副作用で発症してしてしまいます(人工的にコルチゾールが過剰)。

○特徴

ステロイド薬の適切な調整によって改善が可能。

犬のクッシング症候群の原因

クッシング症候群の発症要因として、以下のようなものが挙げられます。

内分泌系の異常

下垂体や副腎の腫瘍によるホルモン異常が、クッシング症候群の主な原因です。
特に7歳以上の高齢犬(シニア犬)での発症が多く見られます。

長期間のステロイド投与

皮膚病や炎症の治療で長期間ステロイド薬を使用しているわんちゃんは、クッシング症候群を発症しやすくなります。
これを医原性クッシング症候群と呼びます。

遺伝的要因

特定の犬種はクッシング症候群になりやすい傾向があります。
特にプードル、ダックスフンド、ビーグル、ボクサーなどはリスクが高いとされています。

犬のクッシング症候群の症状

クッシング症候群はゆっくり進行する病気のため、初期症状が年齢による変化と勘違いされることがあります。
しかし、以下のような特徴的な症状が見られたら要注意です。

クッシング症候群の代表的な症状

  • 水を大量(異常)に飲む、おしっこの量・回数が増える
    クッシング症候群のわんちゃんは、1日に1リットル以上の水を飲むこともあります。
    トイレの回数が増えたり、失禁することもあるため、日常的にチェックしてみてください。
  • 食欲が異常に増加する
    「今まで以上に食べたがる」「食べても満足しない」「食べ物を探し回る」といった行動が増えた場合、クッシング症候群の可能性があります。
  • 毛が薄くなる、肌が黒ずむ
    クッシング症候群のわんちゃんは、対称的な脱毛(左右対称に毛が抜ける)が特徴的です。
    また、皮膚が黒ずんだり、薄くなったりするのも特徴です。
  • お腹が異常に膨らむ(ポットベリー)
    筋肉が衰えて内臓が垂れ下がることで、おなかがポッコリと膨らむのも典型的な症状です。
  • 元気がなくなる、寝てばかりいる
    活動量が減り、寝ている時間が増えます。
  • 皮膚の傷が治りにくい、感染しやすい
    免疫力の低下によって、皮膚炎や膀胱炎を繰り返すこともあります。

※1つでも当てはまる場合は、すぐに動物病院を受診しましょう。

犬のクッシング症候群の診断方法

クッシング症候群の診断には、いくつかの検査を組み合わせて行うのが一般的です。

診断に使われる主な検査

血液検査

コルチゾール値を測定し、異常がないかを確認します。

ホルモン刺激試験(ACTH刺激試験)

ACTHというホルモンを注射し、副腎の反応を調べます。

低用量デキサメタゾン抑制試験(LDDS)

ステロイド(デキサメタゾン)を投与し、コルチゾールの分泌抑制の有無をチェックします。

画像検査(エコー検査・レントゲン検査)

副腎の大きさや腫瘍の有無、石灰化していないかをチェックします。

尿検査

他の病気(糖尿病や肝臓疾患)の除外診断のために尿検査を行うことがあります。

CT・MRI検査(必要に応じて)

下垂体や副腎の腫瘍を詳細に調べるために行うこともあります。

犬のクッシング症候群の治療法

クッシング症候群の治療は、原因に応じて最適な方法を選択します。

薬物療法(内科的治療)(下垂体性・副腎性のどちらにも有効)

トリロスタン(Vetoryl)やミトタン(Lysodren)などの薬を使用し、副腎の働きを抑えます。

  • メリット
    手軽に治療を開始できます。
  • デメリット
    一生薬を飲み続ける必要があります。

外科手術(副腎性クッシング症候群の場合)

副腎腫瘍が原因の場合、外科手術で腫瘍を摘出する方法もあります。
ただし、手術のリスクもあるため、慎重な判断が必要です。

  • メリット
    完治の可能性があります。
  • デメリット
    高齢のわんちゃんでは手術のリスクが高いです。

放射線治療(下垂体性クッシング症候群の場合)

下垂体性クッシング症候群では、放射線治療が有効なケースもあります。
当院では専門的な診断のうえ、最適な治療法をご提案します。

  • メリット
    腫瘍の成長を抑える効果があります。
  • デメリット
    完治は難しいことが多いです。

ステロイドの調整(医原性クッシング症候群の場合)

ステロイド薬の投与量を調整することで改善するケースが多いです。

犬のクッシング症候群のまとめ

クッシング症候群は進行がゆっくりなため、発見が遅れがちです。
しかし、放置すると糖尿病や免疫低下を引き起こし、命に関わることもあります。

「水をよく飲む」「毛が薄くなる」「おなかが膨らむ」などの症状が見られたら、すぐに動物病院を受診しましょう。

わんちゃんのクッシング症候群は、早期発見・早期治療が鍵となる病気です。

もしかして、うちの子クッシングかも…と思ったら、お気軽にご相談ください。

投稿者プロフィール

菊地(さ)愛玩動物看護士

ペンギンが好きです。ジェンツーペンギンも好きですが、アデリーペンギンが一番のお気に入りです。

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