地域密着のホームドクターとして35年
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川崎市中原区の飼い主のみなさま、こんにちは。
武蔵小杉駅からすぐの池田動物病院です。
「おなかに小さなしこりを見つけた」
「何もしていないのにしこりが増えてきた気がする」
— そんな時は乳腺腫瘍(しこり)を疑ってみる必要があります。
わんちゃんの乳腺腫瘍は、未避妊の女の子・中高齢のわんちゃんによく見られ、放置すると進行して転移する可能性もありますが、適切なケアと早期対応で経過を改善できることも少なくありません。
特に予防と定期チェックに力を入れることが、将来的な負担を軽くする鍵になります。
この記事では、以下の内容をわかりやすくお伝えします。
「このしこりは大丈夫?」と感じたら、どうか最後までお読みください。




乳腺腫瘍とは、わんちゃんの乳腺組織にできるしこり全般を指し、良性と悪性(乳がん)に大別されます。
わんちゃんの乳腺は左右に複数対あり、複数の腫瘤が出来ることもあります。
統計上、わんちゃんの乳腺腫瘍はおよそ良性:悪性=1:1とされ、早期に手術できるものは根治できるケースも多いと報告されています。
良性と悪性の見分け方(目安)
| 見た目・性状 | 良性腫瘍 | 悪性腫瘍(乳がん) |
| 成長速度 | ゆっくり | 急速に大きくなる |
| 触感 | 柔らかく、移動性あり | 硬く、皮膚に癒着して動きにくい |
| 表面 | 滑らか | 不整・凹凸あり |
| 皮膚変化 | なし | 潰瘍化・赤み・出血など |
| リンパ節 | 異常なし | 腋窩・鼡径リンパ節の腫大がみられることも |
ただし、見た目だけで良性か悪性かを断定することはできません。
最終的な判断は病理検査によって行われます。
乳腺腫瘍の発生には、女性ホルモン(エストロゲン、プロゲステロン)が深く関係しています。
そのため、発情をくり返している未避妊のわんちゃんでリスクが高まります。
乳腺腫瘍の主な原因は、上記にもあるように、女性ホルモン(エストロゲン・プロゲステロン)です。
避妊手術の時期によって乳腺腫瘍の発生リスクが大きく変わります。
| 避妊手術のタイミング | 乳腺腫瘍の発生率 |
| 初回発情前(6か月齢頃) | 0.5%(ほぼゼロ!) |
| 2回目の発情前 | 8% |
| 2回目の発情後以降 | 26%(避妊手術をしない場合とほぼ同じ) |
つまり、避妊手術が最も効果的な予防方法といえます。
特定の犬種では乳腺腫瘍の発生率が高いことが知られています。
乳腺腫瘍の発生率が高い犬種
これらの犬種で避妊手術をしていない場合は要注意です。

肥満のわんちゃんはホルモンバランスが崩れやすく、乳腺腫瘍の発生率が高くなることが報告されています。
適切な食事管理や運動で予防しましょう。
※男の子のわんちゃんにはほとんどできませんが、まれに発生することもあります。
特に、複数のしこりがある・しこりの成長が早い・皮膚変化を伴う場合には、より注意が必要です。
しこりがある場合、良性か悪性かは見た目やさわっただけでは判断できません。
症状が進行すると腫瘍が破裂し、周囲の皮膚にダメージを与えることもあります。
これにより細菌感染のリスクが高まるため、早期発見が非常に重要です。
乳腺腫瘍が疑われる場合、以下のステップで確定診断に近づきます。
発見されたしこりの発症時期・成長速度・避妊歴・全身の健康状態などを確認し、腫瘤の位置・大きさ・硬さ・可動性をチェックします。
細い針を使って腫瘤から細胞を採取し、顕微鏡で確認する方法です。
良性/悪性の仮判定が可能ですが、確定診断には至らない場合も多いです。
腫瘍の一部または全部を切除して、顕微鏡で詳細に解析します。
これにより、良性・悪性・グレード(悪性度)を正確に判断します。
基礎疾患(甲状腺機能低下症・糖尿病・クッシング症候群など)の有無を調べ、手術適応の可否を判断するための全身状態を評価します。


腫瘍が良性でも悪性でも、基本的には手術で腫瘍を切除することが最も効果的です。
手術後、1週間ほどで回復する子が多いです。
手術で取り切れなかった場合や、悪性腫瘍で転移がある場合、手術後に抗がん剤治療を行うことがあります。
ただし、わんちゃんでは副作用が強く出ることがあるため慎重に判断します。
乳腺腫瘍ではあまり一般的ではありませんが、進行がんの痛みを軽減する目的で行われることがあります。
進行した腫瘍や転移が見られる場合に、化学療法と併用されることがあります。

乳腺腫瘍の治療は、腫瘍の性質・大きさ・転移の有無・わんちゃんの年齢・体力などを総合的に判断して決定されます。
手術後の回復は比較的速く、1週間前後で日常生活に戻れるケースもあります。
治療とは別に、乳腺腫瘍を未然に防ぐ可能性を高める対策も重要です。
乳腺腫瘍は、動物で唯一「予防可能な腫瘍」の一つと考えられており、初回発情前の避妊手術によって発症リスクを大幅に下げる効果が報告されています。
可能であれば“初回発情前(生後6か月前後)”に手術を行うのが最も理想的です。
ただし、避妊手術は個々の健康状態・年齢・繁殖希望などを考慮する必要がありますので、獣医師としっかり相談しましょう。
ご自宅で愛犬のおなかをやさしくさわって、しこりの有無を確認しましょう。
小さな変化も見逃さず、早期発見につなげることができます。
肥満はホルモンバランスを乱し、腫瘍リスクを高める可能性があります。
バランスの取れた食事と適度な運動を心がけましょう。
触診に加えて、超音波検査やレントゲンなどを組み込んだ健康診断を定期的に受けることで、初期の異変を捉える可能性が高まります。
特に中高齢のわんちゃんや避妊していない子は要注意です。
乳腺腫瘍は決して珍しい疾患ではありませんが、予防と早期発見・適切な治療によって、愛犬の健康と生活を守ることができます。
しこりに気づいたら、「とりあえず様子を見る」より「まず受診する」ことが大切です。
当院では、腫瘍科診察や乳腺腫瘍のご相談も常時受け付けています。
疑問や不安があれば、どうぞお気軽にご連絡ください。

この記事の執筆・監修
執筆:菊地(さ) 愛玩動物看護師
監修:名取 獣医師
菊地(さ)愛玩動物看護師
ペンギンが好きです。ジェンツーペンギンも好きですが、アデリーペンギンが一番のお気に入りです。
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