気管虚脱だけじゃない?犬の咳や苦しそうな呼吸の原因と見分け方

川崎市中原区の飼い主のみなさま、こんにちは。
武蔵小杉駅からすぐの池田動物病院です。​

「うちの子がガーガー苦しそうに呼吸している…」
「ケホケホと咳が続いていて心配…」

そんな症状が見られたとき、多くの飼い主さまが思い浮かべるのが“気管虚脱”という病気です。

確かに、気管虚脱は小型犬を中心によく見られる病気のひとつですが、実は咳や呼吸の異常が見られる病気は他にもたくさんあります

今回は、気管虚脱とよく似た症状を示す犬の病気と、それぞれの違いや見分け方、早めに受診すべきサインについて、できるだけわかりやすく解説していきます。

目次

気管虚脱とは?

気管虚脱(きかんきょだつ)とは、喉から肺へと空気を通す“気管”が、潰れてしまう病気です。

健康なわんちゃんの気管は、リング状の軟骨でしっかりと支えられていますが、この軟骨が弱くなったり変形したりすると、呼吸のたびに気管が押しつぶされてしまいます。

その結果、呼吸が苦しくなったり、咳が止まらなくなったりするのです。

気管虚脱で咳をしている小型犬(ガーガーという呼吸音が見られる)

気管虚脱の主な症状

  • ガーガーという音を伴う呼吸(ガチョウの鳴き声のように例えられることも)
  • 興奮時や暑いときに呼吸が荒くなる
  • 咳が長引く(特に運動後・夜間)
  • 咳き込んで吐くようなしぐさをする
  • 散歩中に立ち止まってしまう

小型犬(ヨークシャー・テリア、ポメラニアン、チワワ、トイ・プードルなど)や、中高齢のわんちゃんに多く見られます。

気管虚脱と間違えやすい病気

咳や呼吸の異常に戸惑う飼い主さんと犬(病気の見分けが難しい場面)

咳や呼吸の異常は、さまざまな病気でも見られる共通のサインです。
以下に、気管虚脱と間違えやすい代表的な疾患を紹介します。

慢性気管支炎

慢性気管支炎とは、気管支に慢性的な炎症が起きる病気です。
原因ははっきりしないこともありますが、アレルギーやウイルス感染、加齢などが関係していることもあります。

  • 乾いた咳が1か月以上続く
  • 咳の頻度は日によって違うが、次第に悪化
  • レントゲンでは気管は潰れていない
  • 気管支の壁が厚くなっていることがある

慢性気管支炎の咳は「コンコン」と乾いた感じで、食欲や元気が保たれていることも多いため、様子を見てしまうケースも少なくありません。

僧帽弁閉鎖不全症(心臓病)

シニアの小型犬にとても多い心臓病です。
心臓の弁がきちんと閉じなくなり、血液が逆流してしまうことで心臓に負担がかかり、肺に水がたまったり(肺水腫)咳が出たりします。

  • 咳は安静時にも出る(特に寝ているとき)
  • 呼吸が浅く、速くなる(ハァハァが続く)
  • 散歩や遊びで疲れやすい
  • 聴診で心雑音が聞こえる
  • レントゲンで心臓が大きくなっていることがある

心臓の病気は進行すると命にかかわるため、早期発見と内服薬などの継続治療がとても大切です。

喉頭虚脱・咽頭の異常

喉頭(こうとう)とは、喉の奥の部分で、声帯や空気の通り道を調整しています。

この部分に異常が起こると、うまく空気を取り込めなくなり、「ゼーゼー」「ガーガー」といった音が鳴ります。

  • 呼吸時に大きな異音がする
  • 散歩中に突然倒れそうになる(酸素不足)
  • 苦しそうに首を伸ばして呼吸する
  • 短頭種(パグ、フレンチ・ブルドッグ)や高齢犬に多い

診断には、麻酔下での喉頭鏡検査が必要になることもあります。

逆くしゃみ(リバーススニーズ)

一見するととても苦しそうに見えますが、健康なわんちゃんにもよく見られる生理現象のひとつです。

  • 鼻をすするような「フガフガ」という吸気音
  • 数秒~1分ほどで自然におさまる
  • その後はケロッとしている
  • 主に小型犬でよく見られる

心配ではありますが、逆くしゃみ自体は治療の必要がないケースがほとんどです。
ただ、頻度が多いときは何かしらの疾患が隠れている可能性もあるため要注意です。

肺疾患(肺炎・肺水腫など)

肺に炎症や水がたまる病気です。
特に肺水腫は緊急対応が必要な重篤な病気です。

  • 咳だけでなく、元気消失・食欲低下がある
  • 呼吸数が非常に多い(浅く速い)
  • チアノーゼ(舌の色が紫)になることも
  • レントゲンで肺野が白くなる

肺の病気は進行が速く、気づいたときには重症化していることが多いため、呼吸に異変がある場合はすぐに受診しましょう。

検査で分かること

「咳」や「呼吸がおかしい」と感じたとき、何の病気なのかを見極めるために、動物病院では以下のような検査を行います。

  • 身体検査と聴診
    心雑音や呼吸音の異常、咳の質などを確認
  • レントゲン検査
    気管・肺・心臓の状態をチェック
  • 心エコー検査
    僧帽弁や心臓の動きを可視化
  • 血液検査
    感染や全身状態の把握に
  • 喉頭鏡検査
    喉の奥の構造を見る(必要に応じて)

見た目だけでは判断できない病気も多く、検査によって初めて正確な診断が可能になります。

咳や呼吸の症状で動物病院を受診し検査を受ける犬

飼い主さまが気づく「受診すべきサイン」

こんなときは、すぐに病院にご相談ください。

  • 咳が何日も続く、頻度が増えてきた
  • 苦しそうな呼吸や異音がある
  • 散歩や遊びのあとに咳き込む
  • 夜中や明け方に咳で起きてしまう
  • 呼吸が浅く、ハァハァが止まらない
  • 食欲や元気が落ちている

早めにご相談いただくことで、病気の進行を防ぎ、わんちゃんの生活の質(QOL)を守ることができます。

池田動物病院でできること

当院では、咳や呼吸の異常が見られるわんちゃんに対し、丁寧な問診と検査を行い、必要に応じて東洋医学的なアプローチ(漢方・鍼灸)も併用しながら、症状の緩和と根本原因への対応を行っています。

また、飼い主さまにもきちんと納得していただけるよう、検査結果や治療内容について分かりやすくご説明いたします。

まとめ

「気管虚脱かな?」と思ったその症状、もしかしたら別の病気かもしれません。

咳や呼吸の異常は、どんな病気が隠れているかを自宅で見極めるのはとても難しいものです。

池田動物病院では、さまざまな角度から丁寧に診察を行い、わんちゃんの健康を守るサポートをしています。

少しでも不安な症状があるときは、お気軽にご相談ください。

この記事の執筆・監修
執筆:菊地(さ) 愛玩動物看護師
監修:名取 獣医師

投稿者プロフィール

菊地(さ)愛玩動物看護士

ペンギンが好きです。ジェンツーペンギンも好きですが、アデリーペンギンが一番のお気に入りです。

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