犬の咳、実は心臓が原因かも?動物看護師が解説する僧帽弁閉鎖不全症【川崎市 池田動物病院】

川崎市中原区の飼い主のみなさま、こんにちは。
武蔵小杉駅からすぐの池田動物病院です。

「最近、愛犬がをする」
「年齢とともに心臓が弱っているかもしれない」
と気になることはありませんか?

池田動物病院では、特にシーズー・チワワ・トイプードルなどの小型犬に多い『犬の僧帽弁閉鎖不全症』について、読者に寄り添い、詳しくわかりやすく解説いたします。

「咳って普通?」
「病気かも?」
という不安に答え、心エコー検査や漢方・鍼灸併用のメリット・デメリットを丁寧にご紹介いたします。

この記事を読めば、「うちの子、大丈夫」と安心できるはずです。

目次

そもそも僧帽弁閉鎖不全症ってどんな病気?

僧帽弁の役割と病気の仕組み

わんちゃんの心臓には、左心房と左心室の間に“僧帽弁”という蓋がついています。
本来、この弁は血液を一方向に流すためにきちんと閉まります。
しかし、加齢や遺伝、弁が変性する病気(ミトラルバルブ疾患)によって弁が固くなったり、縮みが弱くなったりすると閉じが悪くなり、血液が逆流するようになります。
これが「僧帽弁閉鎖不全症」です。

うちの子に起きる変化とは?

初期は無症状です。
慢性的な逆流により左心房や左心室が拡張し、心臓に負担がかかります。
さらに進行すると、以下のような変化が見られます。

  • 弁の逆流が増加
  • 心房と心室が肥大
  • 肺や気管に負担がかかり、咳や呼吸困難が現れる

咳」と「心臓」はどう関係しているの?

咳をしているロングコートチワワを心配そうに見守る女性の飼い主。チワワは「ゴホッ」と咳をしており、飼い主は不安げな表情で頬に手を添えている。

気管支が圧迫されると咳が出る

左心房が大きくなると心臓が後方に膨らみ、気管支を圧迫しやすくなります。
喉の奥が圧迫されることで、乾いた咳が出やすくなります。
動作や運動後に「ゲホッ」とした咳が出やすいのは、このためです。

肺に水が貯まると咳が濡れた音に

心臓のポンプ機能が弱ると、血液が肺の血管に滞留し、水分が肺組織内に染み出ます。
これが「肺水腫」です。
湿ったゴロゴロという音の咳や、呼吸がしにくくなる症状が現れます。
これは重篤なサインなので注意が必要です。

飼い主さまが気づきやすいサインまとめ

以下の症状が見られたら要注意です。

  • お散歩後や早朝に「ゲホッ」とくる乾いた咳
  • 眠っているときに「カハッ」と響く呼吸音
  • 喉を気にするような、むせ込む仕草
  • 呼吸が早くなる・苦しそうにしている

これらは心臓病が原因の場合も多く、日頃の観察が早期発見につながります。

心雑音」はどうやって見つける?心エコー検査って?

診察台の上でリラックスして横たわるロングコートチワワに対し、獣医師が優しく超音波検査を行っている様子。エコー画面には心臓のアイコンが映っており、安心感のある雰囲気。

心雑音とはどんな音?

聴診器で胸部を当てると、「ブー」「ガー」「ザッ」といった音が聞こえます。
正常な心音とは異なる雑音で、逆流や血流の乱れを示すサインです。
初期段階でも聴診器で判断可能です。

心エコー検査で得られる情報とは?

視診や触診で異常が疑われた場合、当院では心エコー検査を実施します。
以下の情報が得られます。

  • 僧帽弁からの逆流の有無と程度
  • 左心房・左心室の大きさ(LA/Ao比など)
  • 肺水腫の兆候の有無
  • 心臓の収縮力や弁の動き

目安として、LA/Ao比(左心房/大動脈比)が1.2~1.6なら正常範囲。
2.0以上になると病状進行の可能性が高いと考えられます。

治療方法は?西洋医学+東洋医学のハイブリッドケア

西洋医学の基本治療

ACE阻害薬

  • 血管を広げて血圧を下げ、心臓への負担を軽減
  • 継続服用で逆流の進行抑制が期待できる

利尿薬

  • 体内の余分な水分を尿として排出
  • 肺に水が溜まるのを防ぎ、呼吸を楽にする
  • 急な体重変化には注意しながら使用

強心薬

  • 心筋の収縮力を強め、心拍出力を高める
  • 特に中期~後期の心不全で活躍

東洋医学的アプローチでできること

当院では腫瘍科・東洋医学科を併設し、以下のケアを提供します。

漢方薬

  • 補気補血作用で体力と免疫力を高める
  • むくみ解消や睡眠改善に効果あり
  • 西洋薬と併用して副作用の軽減が期待できる

鍼灸治療

  • 全身の気血循環を整えることで咳や倦怠感を緩和
  • ストレス緩和や気分改善にも効果
  • 身体への負担が少なく、高齢犬にも比較的安全

なぜ両方の治療を併用するの?

西洋薬だけでは症状の進行抑制が主目的ですが、東洋医学を併用することで、身体全体のバランスを整え、薬の副作用を緩和しながらQOL(生活の質)の維持向上ができます。
継続的なケアが必要なわんちゃんには特におすすめです。

東洋医学の診療は、名取獣医師が担当いたします。
初診の方は、お電話でのご予約をお願いいたします。
鍼治療に関しては、2回目以降もお電話か窓口でのご予約のみとなります。

メリット・デメリットはちゃんと理解しておきたい

メリット

  1. 早期発見で寿命延長の可能性あり
    統計では、早期治療を続けたわんちゃんは平均寿命が約1.5倍に延びたという報告があります。

  2. 咳が軽減し、飼い主さまの不安も小さくなる
    咳が減ることで、散歩や睡眠中のストレスも軽くなります。

  3. QOL(生活の質)が向上
    体力、食欲、活動量が維持され、日常生活がより快適に。

  4. 早期ケアの安心感
    小さな変化にも早く対応でき、獣医師との連携がスムーズに。

デメリット

  1. 継続治療が必要になるため費用と時間がかかる
    薬・検査・通院費が積み重なります。

  2. 副作用のリスク
    ACE阻害薬で低血圧や食欲低下、利尿薬で脱水の可能性も。

  3. 東洋医学ケアは通院回数が増える
    鍼灸の頻度によってスケジュール調整が必要です。

  4. 進行すると緊急対応が必要になる可能性あり
    特に肺水腫の症状は緊急性が高く、早期治療が求められます。

日常でできるケアとチェック方法

毎日の観察ポイント

  • 咳の有無と頻度、時間帯の記録(早朝・運動後・就寝時など)
  • 呼吸の速さや深さ、苦しそうな様子がないか
  • 食欲・元気・排便・水分摂取量の変化
  • 体重の増減(特に急激な増加や減少が見られたら注意)

食事&環境でできる工夫

  • 塩分控えめのフードで心臓への負担を軽減
  • 呼吸しやすい室内環境(湿度・温度の管理)
  • 短い散歩をこまめに行い、急な運動は避ける
  • ストレスを避ける静かな生活空間の確保

当院が川崎市エリアで提供するサポート

  1. 専門獣医師による丁寧な診察
    症状だけでなく生活スタイルや環境もヒアリングし、最適な治療計画をご提案します。

  2. 心エコー検査による精密診断
    逆流の程度、心臓の拡張・収縮、肺水腫の兆候などを詳細に把握します。

  3. 西洋医学+東洋医学による統合ケア
    薬物治療だけでなく、漢方・鍼灸併用で身体のバランスを整えます。

  4. 飼い主さまとのじっくり向き合う相談スタイル
    病気の理由や治療の内容を分かりやすく説明し、納得いただいた上でスタート。

  5. 定期フォロー&生活指導の実施
    3~6か月ごとの検査や、食事・運動・室内環境のアドバイスを行います。

まずはここから:心エコーで安心の一歩

咳はただの風邪ではなく、心臓からのサインかもしれません。
小さな変化に気づいた今が、愛犬の健康を守る第一歩です。

もし愛犬の咳が気になっていたり、呼吸が苦しそうに見えたりしたら、ぜひ早めにご相談ください。
心臓病は初期段階で対応することで、治療の幅も広がります。

当院では、心エコー検査だけの診察も承っています。
「すぐに治療するつもりはないけど、ちょっと調べてほしい」という方にもおすすめです。

心臓のエコー検査は、通常の診察時間とは別に検査時間をお取りしますので、お電話でのご予約をお願いいたします。

この記事の執筆・監修
執筆:菊地(さ) 愛玩動物看護師
監修:名取 獣医師

投稿者プロフィール

菊地(さ)愛玩動物看護士

ペンギンが好きです。ジェンツーペンギンも好きですが、アデリーペンギンが一番のお気に入りです。

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