成猫のお食事と栄養|健康を維持するフード選びと体重管理|池田動物病院

川崎市中原区の飼い主のみなさま、こんにちは。
武蔵小杉駅からすぐの池田動物病院です。

「あんなに小さかったうちの子が、もう1歳に」
飼い主さまにとって、愛猫の成長は嬉しいものですね。
でも、子猫のときと同じフードでいいのか、不安になることもあるのではないでしょうか。

池田動物病院にも、
「どんなフードを選べばいいですか?」
「避妊手術のあとに太りやすくなってきました…」
など、成猫期に関するご相談が増えています。

このブログでは、1歳を過ぎた成猫の健康を守るための食事とフード選びのポイントについて、わかりやすくご紹介します。

落ち着いた雰囲気の健康的な成猫。
目次

成猫っていつから?|成長から安定期へ

ねこちゃんは生後1年を迎える頃、身体の成長がほぼ落ち着き、「成猫(せいびょう)」と呼ばれるライフステージに入ります。
この時期は、子猫のように急激に成長するわけではありませんが、日々の食事や運動、生活習慣によって健康状態が大きく変わってくる大切な期間です。

成猫の特徴とは?

  • 年齢の目安
    おおよそ生後12か月(1歳)~7歳頃まで

  • 身体の状態
    成長が止まり、体重・体格が安定してくる

  • 生活の変化
    活動量が少し落ち着き、性格も成熟してくる

「子猫の頃は毎月体重が増えていたのに、最近は変わらない」
そんな声をよく耳にします。
これは、ねこちゃんが「成猫期」に入ったサインのひとつです。

この時期からは、子猫用フードのままでは栄養過多になってしまうこともあるため、早めに食事内容を見直してあげましょう。

成猫にとって“ちょうどいい”食事とは

成猫期は、身体が完成し、成長が落ち着く「安定期」です。
しかし、それは裏を返せば、体重が増えやすくなったり、栄養バランスの偏りが表れやすくなる時期でもあるということです。
毎日の食事が、健康状態に直接影響する大切なタイミングと言えます。

成猫のフード選び、ここがポイント!

  1. 栄養バランスが取れていること(総合栄養食)
    たんぱく質・脂質・ビタミン・ミネラルなどが適切なバランスで含まれているか確認しましょう。

  2. 年齢・体型・生活環境に合っていること
    活発な子と、のんびり屋さんでは必要なカロリーが異なります。
    室内飼育かどうかも影響します。

  3. フードの質が信頼できること
    AAFCOやJPFAなどの基準を満たした「総合栄養食」を選ぶのが安心です。

与える量にも注意!

成猫になってからも、子猫のときと同じ感覚でフードを与え続けていると、知らず知らずのうちにカロリーオーバーになってしまうことも
体重に合わせて、フードパッケージに記載されている目安量を参考にしましょう。

成猫期のねこちゃんには、「与えすぎず・足りなさすぎず」が大切です。
でも、「うちの子にはどれくらいがちょうどいいの?」と迷う方も多いはず。

池田動物病院では、体型・体重・生活習慣に応じたフード選びや給餌量のアドバイスも行っています。
「最近ちょっと太ってきたかも…?」と感じたら、ぜひ一度ご相談くださいね。

フードの選び方|総合栄養食のメリット

成猫の健康を保つうえで、毎日の食事は非常に重要です。
中でも、信頼できる「総合栄養食」を選ぶことが、栄養バランスの整った食生活への第一歩となります。

総合栄養食とは?

「総合栄養食」とは、ねこちゃんに必要な栄養素がそのフードだけでバランスよく摂取できるよう設計されたごはんのことです。
日本では「日本ペットフード公正取引協議会」、海外では「AAFCO(米国飼料検査官協会)」の基準がよく使われています。

池田動物病院では、総合栄養食の中でも、実績があり安全性の高いフードを推奨しています。

ドライフードとウェットフード、どっちがいいの?

特徴ドライフードウェットフード
水分含有量約10%と少なめ約75%と水分が多い
保存性開封後も比較的長持ち開封後はすぐに使い切る必要あり
歯や顎の刺激歯垢がつきにくくなる効果もある柔らかく、食べやすい
カロリー密度高カロリー(少量で栄養がとれる)低カロリー(満腹感を得やすい)

基本的にはドライフードを中心にしつつ、水分摂取が少ない子にはウェットを併用するのがおすすめです。

ねこちゃんは、元々あまり水を飲まない傾向があります。
そのため、ウェットフードやスープ仕立てのトッピングを上手に取り入れることで、自然に水分摂取を増やす工夫も大切です。

また、体質やお口の状態によっては「ウェットの方が食べやすい」「ドライで歯を使いたい」など個体差がありますので、ご不安な場合はお気軽にご相談ください。

成猫のごはん量、どう決める?|体重管理の基本

成猫の食事量は、「パッケージに書いてある通り」で問題ないように見えて、実はねこちゃんのライフスタイルによって必要量が大きく変わってきます

  • 活発に運動する子
  • 避妊・去勢手術を受けた子
  • お家でのんびり過ごす子

これらによって、必要なカロリー(エネルギー量)に差があるため、「一律ではない」という点に注意が必要です。

フード量の基本的な決め方

まずは、お使いの成猫用フードのパッケージに記載された「給与量(目安)」を参考に与えてください。
そのうえで、ねこちゃんの体重の増減や便の状態、活動量を観察しながら、1~2週間ごとに微調整していくのが理想です。

以下に、成猫の1日に必要なフード量の計算方法を載せてみました。

【1日あたりに必要なフード量の計算方法】

猫の体重から安静時エネルギー要求量(RER)を求めます
   ↓
RERに活動係数をかけて1日当たりのエネルギー要求量(DER)を求めます
   ↓
DERをフードの100gあたりのエネルギー量で割り、100をかけます

「RER(安静時エネルギー要求量)」を求めます

RERとはRest Energy Requirementの略称であり、正常な動物が常温環境で安静にしているときの1日に必要なエネルギー要求量のことを指します。
つまり、「ねこちゃんが安静にしているときに必要な1日あたりのエネルギー量」のことです。

RERの数値の出し方は
RER(kcal)= (体重)0.75 × 70
となります。

ちょっと難しそうに見えますが、電卓で次のように計算できます。

電卓を使ってRERを計算する場合
(体重)0.75
体重×体重×体重の結果に √√とルートを2回押して出し、
最後に70をかけて算出します。

例)体重4.5kgのねこちゃんの場合

4.5 × 4.5 × 4.5 = 91.125
91.125に「√(ルート)」を2回押すと「約3.089

3.08 × 70 ≒ 216kcal/day

この216kcalが、その子が静かに過ごす1日に必要なカロリー(RER)になります。

計算が苦手な方は、簡単にRERを求められる概算表があるので載せます。

KgRER(kcal/day)
1.595
2.0118
2.5139
3.0160
3.5179
4.0198
4.5216
5.0234
6.5285
7.0301
7.5317
8.0333
8.5348
9.0364
9.5379

次に「DER(1日あたりのエネルギー要求量)」を計算します

DERとはDaily Energy Requirementの略称であり、各成長段階や活動度に応じた平均的な1日あたりのエネルギー要求量のことを指します。
つまり、「日常生活を送るうえで実際に必要なカロリー量」です。

DERは
DER(kcal)RER × 活動係数
の計算式で導かれます。

例)4.5kg・5歳の避妊・去勢済みのねこちゃんの場合

RER=216
216 × 1.2259.2kcal/day(DER)

259(259.2)kcalが1日に必要なカロリー量となります。

猫の活動係数(DER計算用の目安)

状況・ライフステージ活動係数(目安)
成猫(避妊・去勢済み、室内飼い)1.2〜1.4
成猫(未避妊・未去勢、活動的)1.4〜1.6
成猫(とても活発/屋外に出る)1.6〜1.8
成猫(肥満傾向で減量が必要)1.0
子猫(生後4か月まで)3.0
子猫(生後4〜12か月)2.5
妊娠期2.0〜2.5
授乳期(ピーク時)4.0〜5.0
シニア猫1.1〜1.2
  • 成猫では「避妊・去勢の有無」や「活動量」によって係数が変わります。
  • 子猫ちゃんは成長段階ごとに数値が異なるので注意が必要です。
  • 妊娠・授乳期はエネルギー需要が大きく変動するため、特に調整が重要です。

1日に必要なフードの量を計算する方法

ここまでで「その子に必要な1日のカロリー量(DER)」がわかりました。
あとは与えたいフードのエネルギー量(kcal/100g)を使って、必要なグラム数を計算します。

1日あたりに必要なフード量は、DERをフード1gあたりのエネルギー量で割ると求められます。

1日に必要なフードの量(g) DER × 100 ÷ フードの100gあたりのカロリー

例)体重4.5㎏ 成猫 成猫用総合栄養食 361kcal(361kcal/100gのフードを与えたい場合

259(DER)×100 ÷ 361 = 約71.7g

上記の式より、1日のフード量は72gと導かれ、1日にあげる回数で分けて与えてください。

計算がむずかしいときは…

「計算がちょっと苦手」「自信がない」という方は、無理にご自分でやらなくて大丈夫です。
池田動物病院では、ねこちゃんの体格や生活習慣をもとに、ぴったりのごはん量やフード選びをお手伝いしています。
どうぞお気軽にご相談ください。

成猫の食事回数について

基本は1日2回、朝晩の時間を決めて与えましょう。
ねこちゃんは空腹時間が長すぎると胃液を吐くこともあるため、食間の調整がポイントです。

  • 食いつきが良すぎて早食いしてしまう場合は、数回に分けてゆっくり食べさせる工夫もおすすめです。
  • ねこちゃん用の「早食い防止ボウル」や、食器をずらして出す方法も効果的です。

「うちの子に合ったごはん」を見つけるには?

フードの種類は、ドライ・ウェット・総合栄養食・療法食などさまざまあり、「どれを選べばいいのか迷ってしまう…」という飼い主さまも多いのではないでしょうか?

実は、「正解」はひとつではありません。
ねこちゃんの体質やライフスタイルに合ったごはんを選ぶことが何より大切です。

よくあるご相談とその傾向

お悩み例考えられる対策やポイント
おなかがゆるくなりやすい消化に優しいフード、繊維質を見直す
毛づやがわるい/フケが多いたんぱく質の質や脂肪酸バランスを確認
食いつきがわるいウェットフードの併用、香りの強いもの
すぐ太ってしまう低カロリー設計、量の調整、間食制限

ねこちゃんには「こだわり」がある?

ねこちゃんは味や食感、匂いにとても敏感な動物です。
「昨日まで食べていたフードを急に食べなくなった」なんてことも珍しくありません。

新しいフードに切り替えるときは、1週間ほどかけて少しずつ混ぜながら移行するのがおすすめです。

「このフードでいいのかな?」という迷いがあるときは、まず体調や体重の変化を観察することが大切です。
食べムラ、毛並み、便の状態など、日々のちょっとした変化がサインになります。

当院では、食事の相談だけでなく、体質に合わせたフードの選び方も一緒に考える診療を行っています。
「うちの子にぴったりなごはんを見つけたい」と思ったときは、お気軽にご相談ください。

池田動物病院からのアドバイス|こんなときはご相談を

ねこちゃんの健康管理は、毎日の観察と少しの気づきから始まります。
特に成猫期は、体調が安定している分、不調のサインが見逃されやすい時期でもあります。

以下のような変化に気づいたら、ぜひ早めにご相談ください。

こんな変化は要チェック

  • ごはんを残すようになった/食いつきが急にわるくなった
  • 体重が増えすぎてきた、または痩せてきた
  • 毛並みがパサついている/抜け毛が増えた
  • 便の回数や硬さ、匂いが変わった
  • 嘔吐が増えた、吐き戻しが多くなった
  • 水をよく飲むようになった、あるいは飲まなくなった

これらの変化は、食事の内容が身体に合っていないサインかもしれません。
また、病気の初期症状であることもあるため、軽視せずご相談ください。

池田動物病院でできること

  • 体重や体格に合わせたフードの見直し
  • 便や毛並みなど、体調の変化に応じた栄養アドバイス
  • 食べムラや早食いへの対策フードのご提案
  • 療法食の適応判断、与え方のサポート

飼い主さまが「ちょっと気になる」と感じたときこそが、早めのケアにつながる大切なタイミングです。
池田動物病院では、どんな小さなことでもお話しいただけるような診療を心がけています。

まとめ|健康な毎日は食事から

成猫期は、ねこちゃんの健康を長く支えていくための「土台」を作る大切な時期です。
成長が落ち着き、日々の生活が安定するこの時期だからこそ、食事内容の見直しやフードの選び方がとても重要になります。

成猫の食事管理で大切なポイントまとめ

  • 総合栄養食を基本にする
  • 活動量や避妊・去勢の有無で必要なエネルギー量は変わる
  • 定期的に体重・体型をチェックしながらフード量を調整
  • 食いつきや毛並み、便などに注目して身体に合っているか確認
  • 心配な時は、獣医師に早めに相談するのが安心

池田動物病院から最後にひとこと

「何をどれくらい与えればいいのか分からない」「体型が気になるけど、どう調整したらいい?」
そんなときは、一人で悩まずにぜひご相談ください。

池田動物病院では、ねこちゃんひとりひとりに合ったお食事のアドバイスを、わかりやすくお伝えしています。

愛猫の健やかな毎日を支えるごはんの話、いかがでしたか?
成猫の食事で気になることがあれば、どうぞお気軽にご来院・ご相談ください。

🐾 猫のお食事シリーズはこちら

ねこちゃんの年齢やライフステージに合わせたごはん選びの参考に、以下の記事もあわせてご覧ください。

生後0〜4か月の子猫のお食事と栄養|ミルクから離乳へ健康な成長をサポート
生後5〜12か月の子猫のお食事と栄養|成猫に向けた健康な成長と体重管理
▶ 成猫のお食事と栄養|健康を維持するフード選びと体重管理 (この記事)
シニア猫のお食事と栄養|年齢に合わせた健康管理

この記事の執筆・監修 
執筆:菊地(さ) 愛玩動物看護師
監修:名取 獣医師

投稿者プロフィール

菊地(さ)愛玩動物看護師

ペンギンが好きです。ジェンツーペンギンも好きですが、アデリーペンギンが一番のお気に入りです。

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