生後5〜12か月の子猫のお食事と栄養|成猫に向けた健康な成長と体重管理|池田動物病院

川崎市中原区の飼い主のみなさま、こんにちは。
武蔵小杉駅からすぐの池田動物病院です。

「うちの子も、もうすぐ5か月に」
「大きくなってきたけれど、まだ子猫用のフードでいいのかな?」

そんなご相談を、飼い主さまからよくいただきます。

生後5〜12か月の子猫ちゃんは、見た目はすっかり小さな成猫のようですが、まだまだ成長の途中です。
骨格や筋肉がしっかりと発達し、避妊・去勢手術の有無によって体型や必要なカロリーも変わってくる時期です。

このブログでは、生後5〜12か月の子猫ちゃんを対象に、食事の選び方、与える量や回数、体重管理のポイントをわかりやすくご紹介いたします。

生後5〜12か月の子猫。健康に成長する中期の子猫。
目次

生後5〜12か月の子猫ちゃんの特徴

5か月を過ぎた子猫ちゃんは、身体つきがしっかりとしてきて、動きもますます活発になります。
見た目は「小さな成猫」のように見えますが、まだ成長の真っ最中です。

この時期の主な特徴

  • 骨格・筋肉が発達する時期
    骨や筋肉が急速に成長し、体格が安定してきます。

  • 活動量がピークに近づく
    走り回ったり、遊びが激しくなったりと、消費エネルギーが多い時期です。

  • 永久歯が生えそろう
    歯や顎が成長し、ドライフードを噛んで食べられるようになります。

  • 性成熟を迎える
    この時期に避妊・去勢手術を行うケースが多く、手術後は太りやすくなるため注意が必要です。

成長スピードの変化

  • 0〜4か月
    急成長期(体重がぐんぐん増える)

  • 5〜12か月
    ゆるやかな成長期(体重増加が落ち着き始める)

このため、食事の質と量の調整がとても大切になります。

飼い主さまから多いご相談

  • 「いつ成猫用フードに切り替えればいいの?」
  • 「避妊・去勢後に太ってきてしまった」
  • 「食事回数はそろそろ減らしていい?」

こうした疑問に応える形で、この後の章では食事管理のポイントを解説していきます。

食事の基本|まだ「子猫用フード」を続けましょう

生後5か月を過ぎると、見た目はすっかり大きくなってきて「もう成猫用フードでもいいのかな?」と迷う飼い主さまも多いのではないでしょうか。

ですが、この時期はまだ「子猫用フード(キトンフード)」を与えるのが基本です。

子猫用フードが必要な理由

  • 高たんぱく・高エネルギー設計
    5〜12か月の子猫ちゃんは、成猫よりも多くのカロリーを必要とします。

  • 成長期に必要なビタミン・ミネラルが豊富
    骨や歯、免疫機能をサポートするために調整されています。

  • 消化器にやさしい配合
    まだ未成熟な消化器に配慮されており、吸収しやすく作られています。

成猫用フードに切り替えるタイミング

  • 一般的には生後12か月(1歳)を迎えたときが目安です。
  • 大型種(例:メインクーンなど)は成長がゆっくりなので、1歳半くらいまで子猫用を続けることもあります。
  • 避妊・去勢後に体重管理が必要になっても、子猫用を基本に、量を調整することを優先します。
  • 見た目が大きくなっても、身体の中ではまだ成長が続いています。
  • 成猫用への切り替えは早すぎず、1歳までは子猫用フードを継続しましょう。

成猫との栄養の違い

見た目はすっかり成猫のように見える生後5〜12か月の子猫ちゃんですが、必要な栄養バランスは成猫とは大きく異なります。

子猫用フードと成猫用フードの違い

項目子猫ちゃん用フード成猫用フード
エネルギー量高め(体重1kgあたり約2倍必要)維持に必要な量のみ
たんぱく質豊富(成長・発達に必須)維持量に調整
脂質やや高め(効率的なエネルギー源)過剰は肥満につながる
カルシウム・リン骨格形成に必要な比率で調整成長が止まると必要量は減る
DHA・EPA脳や視覚の発達に必要成猫では必須度は低い

子猫期の特徴

  • 筋肉や骨がまだ発達途上のため、高たんぱく・高カルシウムが必要
  • 脳や神経系も成長するため、DHAや必須脂肪酸が大切
  • 成猫と同じ食事では、栄養不足や成長不良になるリスクがあります
  • 1歳までは子猫用フードで、栄養をしっかりサポート
  • 成猫用は「身体を維持するため」の設計、子猫には不十分
  • 子猫用フードは「成長を促すため」の特別な配合

必要カロリーの計算(RER・DER)

子猫ちゃんの成長には、十分なエネルギー(カロリー)が必要です。
ただし与えすぎも肥満につながるため、計算を目安にしながら調整しましょう。

以下に、5か月~12か月頃の猫の1日に必要なフード量の計算方法を載せてみました。

【1日あたりに必要なフード量の計算方法】

猫の体重から安静時エネルギー要求量(RER)を求めます
   ↓
RERに活動係数をかけて1日当たりのエネルギー要求量(DER)を求めます
   ↓
DERをフードの100gあたりのエネルギー量で割り、100をかけます

「RER(安静時エネルギー要求量)」を求めます

RERとはRest Energy Requirementの略称であり、正常な動物が常温環境で安静にしているときの1日に必要なエネルギー要求量のことを指します。
つまり、「ねこちゃんが安静にしているときに必要な1日あたりのエネルギー量」のことです。

RERの数値の出し方は
RER(kcal)= (体重)0.75 × 70
となります。

ちょっと難しそうに見えますが、電卓で次のように計算できます。

電卓を使ってRERを計算する場合
(体重)0.75
体重×体重×体重の結果に √√とルートを2回押して出し、
最後に70をかけて算出します。

例)体重2kgのねこちゃんの場合

2 × 2 × 2 = 8
8に「√(ルート)」を2回押すと「約1.681

1.681 × 70 ≒ 117.67kcal/day

この118kcalが、その子が静かに過ごす1日に必要なカロリー(RER)になります。

計算が苦手な方は、簡単にRERを求められる概算表があるので載せます。

体重(kg)RER(kcal/day)
0.542
1.070
1.595
2.0118
2.5139

次に「DER(1日あたりのエネルギー要求量)」を計算します

DERとはDaily Energy Requirementの略称であり、各成長段階や活動度に応じた平均的な1日あたりのエネルギー要求量のことを指します。
つまり、「日常生活を送るうえで実際に必要なカロリー量」です。

DERは
DER(kcal)RER × 活動係数
の計算式で導かれます。

例)2kg・6か月齢のこねこちゃんの場合

RER=118
118 × 2.5295kcal/day(DER)

295kcalが1日に必要なカロリー量となります。

猫の活動係数(DER計算用の目安)

状況・ライフステージ活動係数(目安)
成猫(避妊・去勢済み、室内飼い)1.2〜1.4
成猫(未避妊・未去勢、活動的)1.4〜1.6
成猫(とても活発/屋外に出る)1.6〜1.8
成猫(肥満傾向で減量が必要)1.0
子猫(生後4か月まで)3.0
子猫(生後4〜12か月)2.5
妊娠期2.0〜2.5
授乳期(ピーク時)4.0〜5.0
シニア猫1.1〜1.2

1日に必要なフードの量を計算する方法

ここまでで「その子に必要な1日のカロリー量(DER)」がわかりました。
あとは与えたいフードのエネルギー量(kcal/100g)を使って、必要なグラム数を計算します。

1日あたりに必要なフード量は、DERをフード1gあたりのエネルギー量で割ると求められます。

1日に必要なフードの量(g)DER × 100 ÷ フードの100gあたりのカロリー

例)体重2㎏ 5か月齢子猫 子猫用総合栄養食 407kcal(407kcal/100gのフードを与えたい場合

295(DER)×100 ÷ 407 = 約72.48g

上記の式より、1日のフード量は73gと導かれ、1日にあげる回数(3~4回)で分けて与えてください。

これを1日3〜4回に分けて与えるのが理想です。

計算がむずかしいときは…

「計算がちょっと苦手」「自信がない」という方は、無理にご自分でやらなくて大丈夫です。
池田動物病院では、ねこちゃんの体格や生活習慣をもとに、ぴったりのごはん量やフード選びをお手伝いしています。
どうぞお気軽にご相談ください。

子猫の体重別 1日の必要カロリー(活動係数2.5の場合)

体重(kg)RER(kcal)DER(kcal)
1.070175
1.595238
2.0118295
2.5139348
3.0160400
3.5179448
4.0198495
  • 活動係数は 2.5固定(生後5〜12か月の子猫ちゃん用)
  • 体重に応じて必要カロリーを算出
  • フードのカロリー表示を確認し、適量を割り出す
  • 成長に合わせて1〜2週間ごとに微調整

食事回数と与え方の目安

生後5〜12か月の子猫ちゃんは、身体の成長が続いている一方で、消化機能は安定してきます。
そのため、食事回数は少しずつ減らしても大丈夫になってきます。

月齢ごとの食事回数の目安

月齢食事回数ポイント
5〜6か月3〜4回/日まだ小分けが安心。肥満防止のため量は調整。
7〜9か月3回/日消化器も発達し、回数を減らしてOK。
10〜12か月2〜3回/日成猫に近づき、1日2回でも大丈夫に。

最終的には1歳を目安に、成猫と同じ「1日2回食」へ移行します。

与え方の工夫

  • 早食い防止用のお皿を使う
    勢いよく食べる子は食べすぎ・吐き戻し防止に有効です。
  • 複数の場所にお皿を置く
    遊びながら少しずつ食べられるようになります。
  • 水分補給も意識
    ドライフードが中心なら、ウェットやぬるま湯をトッピングして水分摂取を補助しましょう。
  • 「おねだりに負けて追加であげる」ことが肥満の原因に。必ず決められた量で調整を。
  • 避妊・去勢後は基礎代謝が落ちるため、食事回数よりもカロリー総量の調整が大切です。

よくあるお悩みと注意点(避妊・去勢後の体重管理など)

生後5〜12か月は「子猫から成猫へ移行する時期」。
この間に飼い主さまから特に多いのが体重管理とフード切り替えに関するご相談です。

よくあるお悩みと対応

避妊・去勢後に太りやすくなった

  • 避妊・去勢手術をすると、ホルモンバランスが変化し、基礎代謝が下がります。
  • 同じ量を食べていても太りやすくなるため、手術後はフード量を10〜20%減らすのが目安です。
  • 可能であれば「避妊・去勢後用の子猫フード」に切り替えるのもおすすめです。

フードはいつ成猫用に切り替える?

  • 基本は1歳(12か月)を迎えたときが目安。
  • 早く切り替えると栄養不足に、遅すぎると肥満につながることがあります。
  • 1歳までは「子猫用フード」、その後は「成猫用」へ徐々に移行しましょう。

食欲が旺盛すぎる

  • 活発な時期なので、おねだりが増える子もいます。
  • おやつは総カロリーの10%以内に抑えましょう。
  • 空腹で吐き戻してしまう場合は、量を増やすのではなく回数を分ける工夫を。

あまり食べない/体重が増えない

  • 遊びに夢中でお食事がおろそかになることもあります。
  • 食欲が落ちる日が続く場合は、口腔トラブルや病気の可能性もあるため受診をおすすめします。
  • 毎週の体重測定で、しっかり増えているか確認しましょう。

注意すべきポイントまとめ

  • 避妊・去勢後は太りやすいので食事管理が必須
  • 成猫用フードへの切り替えは「1歳」が目安
  • おねだりや食欲に振り回されず「適量を守る」ことが大切
  • 食欲不振や体重減少は受診のサイン

まとめ|成猫へのステップアップを健康に

生後5〜12か月の子猫ちゃんは、見た目は成猫に近づいていても、身体の中ではまだまだ成長が続いています。
この時期の食事管理は、成猫になってからの健康を大きく左右する大切な準備期間です。

子猫(5〜12か月)の食事管理ポイントまとめ

  • 1歳までは子猫用フードを継続
  • 高たんぱく・高エネルギー設計のフードで骨や筋肉をサポート
  • カロリー計算で必要量を把握
  • 食事回数は徐々に減らし、最終的に1日2回へ
  • 避妊・去勢後は太りやすいので、フード量を調整
  • 「食欲不振」「下痢」「体重の増減」は早めに相談

飼い主さまへのメッセージ

「もう大きくなったから大丈夫」と思いがちですが、5〜12か月の時期はまだ発育の途中です。
この期間に正しいフード選びと量の調整をしてあげることが、成猫になったときの健康を守ります。

池田動物病院では、ねこちゃんのライフステージに合わせた食事のアドバイスを行っています。
「この量で合っているのかな?」「太りすぎが心配」など、どんな小さなことでもご相談ください。

🐾 猫のお食事シリーズはこちら

ねこちゃんの年齢やライフステージに合わせたごはん選びの参考に、以下の記事もあわせてご覧ください。

生後0〜4か月の子猫のお食事と栄養|ミルクから離乳へ健康な成長をサポート
▶ 生後5〜12か月の子猫のお食事と栄養|成猫に向けた健康な成長と体重管理 (この記事)
成猫のお食事と栄養|健康を維持するフード選びと体重管理
シニア猫のお食事と栄養|年齢に合わせた健康管理

この記事の執筆・監修 
執筆:菊地(さ) 愛玩動物看護師
監修:名取 獣医師

投稿者プロフィール

菊地(さ)愛玩動物看護師

ペンギンが好きです。ジェンツーペンギンも好きですが、アデリーペンギンが一番のお気に入りです。

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