犬の白内障|目が白く濁る…その症状、もしかして白内障かも?原因・治療・予防を獣医師が解説

川崎市中原区・武蔵小杉エリアの飼い主さま、こんにちは。
池田動物病院です。

年齢を重ねたわんちゃんの目が白く濁ってきて、「白内障かも…」と心配になったことはありませんか?
白内障は、シニア期に多いだけでなく、若いわんちゃんにも起こることがある目の病気です。
進行すると視力が低下し、生活の質(QOL)に大きな影響を与えることもあります。

この記事では、白内障の症状や原因、治療法、予防法、自宅でのケアまで、獣医師がわかりやすく解説いたします。
大切な家族の目の健康を守るため、早めの気づきと対策が何よりも大切です。

柴犬の顔アップ。黒目に白い濁りがある白内障イメージ。
目次

白内障とは

白内障とは、わんちゃんの目の中にある「水晶体」という透明なレンズのような部分が、白く濁ってしまう病気です。

健康な水晶体は、外からの光をしっかり通して網膜に届ける役割をしています。
しかし、白く濁ってしまうと光がうまく届かず、物が見えにくくなったり、最終的には失明してしまうこともあります。

この濁りは、水晶体の中のタンパク質が変性することで起こります。
一度濁ってしまった水晶体は元には戻らず、時間の経過とともにゆっくりと進行していきます。

正常なわんちゃんの目と白内障の目の断面図。左は透明な水晶体、右は白く濁った水晶体を示している。

わんちゃんの白内障の症状とは?

白内障が進行すると、次のような症状が見られることがあります。

  • 目が白く濁って見える
  • 家具や壁にぶつかるようになる
  • 散歩中に溝や段差を踏み外す
  • 目の前のおやつやごはんに気づかない
  • 涙や目やにが増える、目が赤くなる
  • 光をまぶしがる

白内障が悪化すると、ぶどう膜炎・緑内障・網膜剥離など、ほかの眼の病気を併発することがあります。
これらは強い痛みや失明の原因となるため、早めの受診が大切です。

白内障の進行段階

犬の白内障は、進行の程度によって4つのステージに分けられます。

ステージ1:初発白内障:水晶体の一部(10~15%程度)が白く濁っている状態
ステージ2:未熟白内障:濁りが広がり(水晶体の15%以上)、視力に影響が出始める段階
ステージ3:成熟白内障:水晶体全体が白く濁り、ほとんど視力を失っている状態
ステージ4:過熟白内障:水晶体が液状化し、炎症や合併症を起こしやすくなった段階

白内障は自然に治ることはありません。
早期発見と治療、そして日常のケアが、わんちゃんの視力と生活の質を守る鍵になります。

犬の白内障の進行段階を示すイラスト。左から初発白内障、未熟白内障、成熟白内障、過熟白内障の4段階を順に描いている

白内障 各ステージごとのイメージ図

白内障の原因

わんちゃんの白内障は、いくつかの原因によって発症します。

遺伝性白内障

一部の犬種では、若くして白内障を発症することがあります。
白内障が起こりやすい犬種には以下が挙げられます。

  • トイプードル
  • アメリカンコッカースパニエル
  • チワワ
  • 柴犬
  • ヨークシャーテリア
  • シーズー
  • ボストンテリア

加齢性白内障

年齢とともに水晶体のたんぱく質が変性し、白く濁っていきます。
特に7歳以降のシニア期に発症しやすくなります。

その他の要因

代謝性白内障

糖尿病、甲状腺機能低下症、クッシング症候群といった基礎疾患に罹患していると発症しやすいといわれています。

続発性白内障

ぶどう膜炎などが原因で、白内障になる場合があります。

外傷性白内障

目のケガがきっかけで発症することもあります。

白内障の検査方法

白内障の診断には、いくつかの検査を組み合わせて行います。

  • 細隙灯(さいげきとう)検査
    スリットランプという機械を使い、水晶体の濁りや角膜の状態を詳しく観察します。
    この検査によって、白内障の診断とステージ評価を行います。

  • 眼圧測定
    緑内障の有無や眼圧の異常をチェックします。

  • 超音波検査
    目の奥の状態や網膜の付着状態を調べます。

  • 網膜電図(ERG)
    網膜が光を感じて正常に働いているかを確認します。

  • 血液検査
    糖尿病や甲状腺機能低下症、クッシング症候群など、白内障の原因になり得る全身疾患がないかを調べます。

早期発見や治療方針の決定のためには、これらの検査がとても重要です。

白内障の治療法

白内障の治療は、大きく分けて「進行を遅らせる方法」と「根本的に治す方法」があります。

内科療法(進行を遅らせる治療)

  • 点眼薬:水晶体の濁りを改善する効果はありませんが、進行を遅らせる目的で使用します。
  • 内服薬・サプリメント:アスタキサンチンやルテインなど、抗酸化成分を含む製品を用います。
  • 選ばれるケース:高齢で進行がゆっくりなわんちゃんや、全身状態から手術が難しい場合に選択されることが多いです。

外科療法(手術による根本治療)

  • 濁った水晶体を取り除き、犬用人工レンズを挿入します。
  • 外科療法は、白内障を根本的に治療したい場合や若齢性、進行度の早い症例で選択されることが多い治療法となります。
  • 網膜や角膜の健康状態、全身の健康状態を確認し、手術が可能かどうかを判断します。
  • 手術は当院では行っておらず、眼科専門の動物病院をご紹介します。

わんちゃんの白内障手術は人間の白内障手術よりも術後の合併症リスクが高く、似て非なる手術となります。
術後のアフターケアも含め、しっかりと手術内容を理解して選択してください。

費用の目安

※検査内容や治療方針によって異なります。

内容目安費用
眼科検査(細隙灯・眼圧・超音波など)約8,000〜10,000円
血液検査約15,000〜30,000円
点眼薬1本あたり約2,000円〜
サプリメント月あたり約3,000〜5,000円
手術紹介先の眼科専門病院でご確認ください

自宅でできるケア・予防法

白内障を完全に防ぐ方法はありませんが、日常生活での工夫によって進行を遅らせたり、生活の質を保つことができます。

  • 紫外線対策
    強い紫外線は水晶体の酸化ストレスを高め、白内障の進行に関係するといわれています。
    日中の強い日差しを避け、日陰を選んで散歩する、犬用ゴーグルや帽子を活用するのも良い方法です。

  • 生活環境の工夫(バリアフリー化)
    視力が低下すると、家具や段差にぶつかりやすくなります。
    家具の角にクッションをつける、段差を減らす、通路を広くするなど、安心して歩ける環境を整えましょう。

  • 食事・サプリメント
    ブルーベリーに多く含まれるアントシアニン、ウコンのクルクミノイド、アスタキサンチン(カルテノイド)、ビタミンC・Eなどの抗酸化成分は、目の健康維持に役立つ可能性があります。
    フードやサプリで取り入れてみましょう。

  • 漢方
    目の栄養を養うために漢方を使うこともおすすめです。

  • 日常的な観察
    「段差を避けるようになった」「物にぶつかるようになった」など、小さな変化も見逃さず、早めに動物病院で相談しましょう。

犬の白内障のまとめ

わんちゃんの白内障は、進行すると視力を失ってしまうこともある病気です。
遺伝や年齢、糖尿病など、いろいろな原因で起こります。

「目が白っぽくなってきた」「よく物にぶつかるようになった」など、ちょっとした変化も早めに気づいてあげることが大切です。
早めに検査や治療を始めることで、進行をゆるやかにしたり、毎日の暮らしを快適に保つことができます。

池田動物病院では、わんちゃん一頭一頭の状態に合わせて、丁寧に診察し、ぴったりの治療やケアをご提案しています。
気になることがあれば、いつでもお気軽にご相談ください。

この記事の執筆・監修 
執筆:菊地(さ) 愛玩動物看護師
監修:名取 獣医師

投稿者プロフィール

院長 石井 隼

あなたは犬派?猫派?どっち派?

わたしは…どっちも好き!とどちらか選べない院長です。

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