シニア犬の食事と栄養管理|年齢に応じたフードの選び方と注意点

川崎市中原区の飼い主のみなさま、こんにちは。
武蔵小杉駅からすぐの池田動物病院です。

「最近、うちの子が前より寝ている時間が長いかも…」
「ごはんの食べ方がゆっくりになってきたな」
そんなふとした変化に気づいたら、シニア期に入ったサインかもしれません。

わんちゃんは、一般的に7歳頃から少しずつ年齢による身体の変化が始まります
代謝が落ちたり、筋肉が減ってきたり、内臓の働きがゆっくりになることもあります。
そうした変化に合わせて、食事の内容や量を見直してあげることが、健康に長生きするための大切なポイントです。

今回は、シニアのわんちゃんに合ったフードの選び方や、ごはんの量の目安、体調に合わせた工夫などについて、わかりやすくご紹介します。
「何をどれくらい食べさせればいいの?」と迷ったときの参考になれば嬉しいです。

目次

シニア犬の食事の選び方

わんちゃんも年を重ねると、身体の中で少しずつ変化が起こってきます。
こうした変化に合わせて、食事も見直してあげることがとても大切です。

毎日のごはんには、「シニア用総合栄養食」と書かれたフードを選びましょう。
これは、フードとお水だけで必要な栄養がしっかりとれるように作られています。

「一般食」「副食」と書かれているものは、いわゆる“おかず”のような存在です。
メインのごはんに少し混ぜて使うタイプなので、単体では栄養が足りません。

シニア犬用フードは、年齢とともに起こる身体の変化に合わせて工夫されています。
下の表のように、それぞれの特徴に対応した栄養設計がされています。

加齢による身体の変化シニア犬用フードの特徴
代謝が落ちて太りやすくなる低脂肪・低カロリー
免疫力が下がる抗酸化成分の強化(免疫力アップ)
胃腸がデリケートに消化しやすい炭水化物(米など)
心臓や腎臓などの内臓機能が低下するミネラルの量を調整
関節のトラブルが増えるグルコサミンなどを配合
筋肉量が減って運動能力が落ちる良質なたんぱく質を強化
被毛や皮膚の状態が変わるオメガ脂肪酸を配合

たとえば、シニア犬が若い頃と同じごはんを食べ続けていると、代謝が落ちているためにカロリー過多になり、体重が増えてしまうことがあります。
専用フードに切り替えることで、こうしたリスクを減らしながら、必要な栄養をしっかりと補うことができます。

また、シニア期にはおなかをこわしやすくなったり、便秘気味になったり、硬いものを食べづらくなるなど、さまざまな変化が見られることもあります。

ただし、せっかくフードを切り替えても、愛犬がなかなか食べてくれないこともあります。
理由としては、味や香りが好みに合わなかったり、お口の中や胃腸の調子が悪くて食欲が落ちていたり、噛むのがつらいということも考えられます。

そんな時には、以下のような工夫を試してみてください。

  • 電子レンジや湯せんで軽く温めて、香りを引き立てる
  • お湯でふやかして柔らかくする
  • ウェットタイプのフードに変えてみる
  • 手作り食を取り入れてみる

それでも食べない場合や、気になる症状があるときには、病気が隠れている可能性もあるため、早めに動物病院でご相談ください。
わんちゃんの身体に合ったフードや与え方を、獣医師と一緒に考えていくことが大切です。

床で横になり穏やかな表情を浮かべるシニア犬(ダックスフンド)

シニア犬のごはん量の目安

シニア犬の1日に必要な食事量は、身体の大きさや生活スタイルによって大きく変わってきます。
まずは、フードのパッケージに記載されている「給与量の目安」を参考にしてみましょう。

ただし、これはあくまで目安です。
年齢を重ねたわんちゃんは、若い頃に比べて運動量が減ったり、寝ている時間が増えたりと、消費するエネルギーが少なくなる傾向にあります。
そのため、体重の増減を見ながら、ごはんの量を調整してあげることが大切です。

ここでは、少し詳しく「ごはんの適量を計算する方法」をご紹介します。
数字が苦手な方も、最後に簡単な目安表やサポートのご案内がありますので、安心して読み進めてくださいね。

以下に、シニア犬の1日に必要なフード量の計算方法を載せてみました。

【1日あたりに必要なフード量の計算方法】

犬の体重から安静時エネルギー要求量(RER)を求めます
   ↓
RERに活動係数をかけて1日当たりのエネルギー要求量(DER)を求めます
   ↓
DERをフードの100gあたりのエネルギー量で割り、100をかけます

「RER(安静時エネルギー要求量)」を求めます

RERとはRest Energy Requirementの略称であり、正常な動物が常温環境で安静にしているときの1日に必要なエネルギー要求量のことを指します。
つまり、「わんちゃんが安静にしているときに必要な1日あたりのエネルギー量」のことです。

RERの数値の出し方は
RER(kcal)= (体重)0.75 × 70
となります。

ちょっと難しそうに見えますが、電卓で次のように計算できます。

電卓を使ってRERを計算する場合
(体重)0.75は
体重×体重×体重の結果に √√とルートを2回押して出し、
最後に70をかけて算出します。

例)体重5kgのわんちゃんの場合

5 × 5 × 5 = 125
125に「√(ルート)」を2回押すと「約3.34

3.34 × 70 ≒ 234kcal/day

この234kcalが、その子が静かに過ごす1日に必要なカロリー(RER)になります。

計算が苦手な方は、簡単にRERを求められる概算表があるので載せます。

体重(kg)RER(kcal/day)体重(kg)RER(kcal/day)
1.59511423
2.011812451
2.513913479
3.016014507
3.517915534
4.019816560
4.521617586
5.023418612
6.528519637
7.030120662
7.531721687
8.033322711
8.534823735
9.036424759
9.537925783
10.0390

次に「DER(1日あたりのエネルギー要求量)」を計算します

DERとはDaily Energy Requirementの略称であり、各成長段階や活動度に応じた平均的な1日あたりのエネルギー要求量のことを指します。
つまり、「日常生活を送るうえで実際に必要なカロリー量」です。

DERは
DER(kcal)RER × 活動係数
の計算式で導かれます。

高齢のわんちゃんの場合、活動係数1.4が目安です。

例)5kg・14歳のシニアのわんちゃんの場合

RER=234
234 × 1.4327.6kcal/day(DER)

328(327.6)kcalが1日に必要なカロリー量となります。

1日に必要なフードの量を計算する方法

ここまでで「その子に必要な1日のカロリー量(DER)」がわかりました。
あとは与えたいフードのエネルギー量(kcal/100g)を使って、必要なグラム数を計算します。

1日あたりに必要なフード量は、DERをフード1gあたりのエネルギー量で割ると求められます。

1日に必要なフードの量(g)= DER × 100 ÷ フードの100gあたりのカロリー

例)体重5㎏ 高齢犬 シニア犬用総合栄養食 321kcal(321kcal/100gのフードを与えたい場合

328(DER)×100 ÷ 321 = 約102g

→ 朝晩2回に分けるなら、1回あたり約51gが目安になります。

計算がむずかしいときは…

「計算がちょっと苦手」「自信がない」という方は、無理にご自分でやらなくて大丈夫です。
池田動物病院では、わんちゃんの体格や生活習慣をもとに、ぴったりのごはん量やフード選びをお手伝いしています。
どうぞお気軽にご相談ください。

おむつをつけてベッドの上で静かに眠る高齢犬

シニア犬の食事回数

元気で食欲があるうちは、基本的に1日2回のごはんで問題ありません。

ただ、年齢を重ねるにつれて消化機能が少しずつ衰えてくると、一度にたくさん食べられなくなり、必要な栄養がしっかり摂れなくなってしまうことがあります。

そんなときは、1回の量を減らして1日3〜4回に分けて与える方法がおすすめです。
胃腸への負担をやわらげながら、1日を通して十分な栄養を補うことができます。

補足:こんな工夫もおすすめです

  • 間隔はなるべく均等に
    朝・昼・夕方・夜など、可能な範囲で間隔をあけてあげると、胃にやさしいペースになります。

  • 夜間の空腹対策に
    夜間におなかが空いて吐いてしまう子は、寝る前に少量のフードを追加するのも一案です。

  • タイマーや自動給餌機も活用
    日中に留守が多い方は、自動給餌機などを使って回数を増やす工夫もできます。

シニア犬の食事環境

シニア期を迎えたわんちゃんは、噛む力や飲み込む力、消化機能が少しずつ弱くなっていくことがあります。
だからこそ、食事そのものだけでなく、「食べる環境」を整えることも大切です。

食器の高さを見直しましょう

床に直接置いたお皿でごはんをあげていると、首や背中に負担がかかってしまうことがあります。
特に筋力が落ちてくるシニア犬にとっては、無理のない姿勢でごはんが食べられる高さが理想です。

  • 肩の高さ程度にお皿を上げると、自然な体勢で食べられます
  • 少しだけ下を向く角度が、飲み込みやすくおすすめです
  • 食事台を使うことで、前脚や首の負担も軽減されます

フードの硬さも調整を

シニア犬は歯や顎の力も弱まり、硬いフードを噛みにくくなることがあります。
以下のような工夫で、食べやすく・消化しやすい状態にしてあげましょう。

  • ドライフードはぬるま湯でふやかす
    人肌程度(約40℃)が目安です。
    熱湯は栄養が壊れる原因になるため避けましょう。

  • レトルトフードや缶詰を併用する
    柔らかく水分もとれるため、食べやすさがアップします。

  • フードを温めて香りを立てる
    食欲が落ちている場合には、軽く温めることで香りが引き立ち、食べる意欲につながることもあります。
やさしい笑顔でリラックスしているシニア犬

まとめ

シニア犬にとって、「自分の口でごはんを食べられること」は、健康を保ち、穏やかな毎日を過ごすための大切な力になります。
年齢とともに変化する体調や生活スタイルに合わせて、食事の内容や与え方、環境を見直してあげることが何よりのケアです。

日々のなかで「食べる量が減った」「ごはんに興味を示さない」「噛みにくそう」などの変化に気づいたときは、早めの対応が大切です。

どんな些細なお悩みでも、どうぞお気軽に池田動物病院スタッフへご相談ください。
わんちゃんに合ったフード選びや、食事の工夫について、丁寧にサポートいたします。

この記事の執筆・監修
執筆:菊地(さ) 愛玩動物看護師
監修:関根 愛玩動物看護師

投稿者プロフィール

関根(愛玩動物看護士)

10才のチョコタンチワワと暮らしてます。目指せ20才!

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