猫の慢性腎臓病(CKD)に早く気づくために|7歳から始めたい初期症状チェックとケア方法

川崎市中原区の飼い主のみなさま、こんにちは。
武蔵小杉駅からすぐの池田動物病院です。​

高齢のねこちゃんに多い「慢性腎臓病(CKD)」は、進行性で完治が難しい病気ですが、早期発見と日常的なケアで進行を遅らせることが可能です。
完全室内飼育のねこちゃんでも発症のリスクがあるため、7歳を過ぎたら意識的に健康管理を行うことが大切です。

この記事では、ねこちゃんの慢性腎臓病について、症状・原因・診断方法・ステージ分類・治療法・家庭でのケア方法まで、わかりやすく解説いたします。

目次

猫の慢性腎臓病とは?年齢とともに進行する猫に多い疾患

腎臓のイラストと並んで座る茶トラの猫(猫の腎臓の働きをイメージした説明用イラスト)

慢性腎臓病の定義と特徴

ねこちゃんの慢性腎臓病とは、数か月以上にわたって腎臓の機能が徐々に低下し、老廃物の排出ができなくなる病気です。
10歳以上のねこちゃんでは約30~40%が罹患しているとも言われる、ねこちゃんにとても多い疾患です。
進行性でありながら初期症状がわかりにくく、発見が遅れやすいという特徴があります。

猫の慢性腎臓病の主な原因とは

加齢による腎機能の自然な低下

加齢はねこちゃんの腎臓病の最も一般的な原因です。
腎臓の細胞が老化することで濾過機能が徐々に失われていきます。
7歳を過ぎたあたりからリスクが高まるため、定期的な検査が推奨されます。

その他の原因や悪化要因

  • 多発性嚢胞腎などの遺伝性疾患
  • 尿路結石や尿閉による腎障害
  • 慢性的な脱水
  • 高血圧や感染症
  • ユリ科植物や薬品(エチレングリコールなど)の誤飲

これらの要因が複合的に作用し、腎機能を悪化させることがあります。

猫の慢性腎臓病の初期症状と気づくポイント

水皿から水をペロペロと飲むキジトラ猫(猫の水分摂取の様子)

飼い主さまが見落としやすい行動の変化

慢性腎臓病の初期は無症状のことが多く、以下のような変化を見逃さないことが重要です。

  • お水をよく飲むようになった
  • おしっこの量や回数が増えた
  • 体重が徐々に減少している
  • 毛艶が悪くなった
  • 食欲の低下、元気がない

これらの変化に早く気づくことで、早期診断・早期治療につながります。

猫の慢性腎臓病の検査と診断方法

血液検査とSDMAの活用

慢性腎臓病の診断では、BUN(尿素窒素)・CRE(クレアチニン)・SDMA(早期腎不全マーカー)といった血液の値が重要です。
特にSDMAは初期段階でも上昇しやすく、早期発見に有用です。

尿検査・画像検査・血圧測定もあわせて実施

  • 尿比重やたんぱく量の測定
  • エコー検査で腎臓の構造を確認
  • 高血圧の有無を測定

これらの検査を組み合わせることで、より正確な診断が可能です。

猫の慢性腎臓病のステージ分類と進行の程度(IRIS分類)

ねこちゃんの腎臓病は、国際的に採用されているIRIS分類(International Renal Interest Society)に基づいており、4つのステージに分類されます。

ステージごとの特徴と進行度

  • ステージ1:高窒素血症なし(クレアチニン正常範囲内)
    血液検査で異常が見られないことも多く、クレアチニンまたはSDMAが軽度に上昇している状態です。

  • ステージ2:軽度の高窒素血症(クレアチニン正常範囲内~やや高値)
    食欲や元気に大きな変化はありませんが、お水をよく飲むなどの軽い変化が見られることがあります。

  • ステージ3:中等度の高窒素血症
    体重減少、食欲不振、嘔吐などの症状が明らかになります。
    腎機能の著しい低下が見られ、治療の必要性が高まります。

  • ステージ4:重度の高窒素血症
    老廃物の蓄積により、尿毒症のような重篤な症状(嘔吐やけいれん、重度の貧血など)が現れ、命にかかわる状態になることがあります。

猫の慢性腎臓病の治療法|進行を遅らせる方法とは

食事療法の重要性と導入のタイミング

腎臓に負担をかけない療法食は、慢性腎臓病の治療において基本となります。
リンやたんぱく質を制限し、嗜好性や水分含有量にも配慮されています。

  • 早期ステージ(ステージ1~2)からの導入が推奨されます
  • ウェットタイプやふりかけタイプで食べやすく工夫しましょう
  • メーカーによって味や形状が異なるため、ねこちゃんの好みに合わせて選びましょう

点滴や薬物療法の併用

  • 皮下点滴で脱水を予防し、老廃物の排出を促しましょう
  • リン吸着剤でリンをコントロールしましょう
  • 降圧剤や貧血治療薬などで合併症を防ぎましょう

治療内容は腎臓病のステージやねこちゃんの体質に応じて個別に設計します。

猫の慢性腎臓病と上手に付き合う日常ケアの工夫

水分摂取を促すための工夫

  • 新鮮なお水をいつでも飲めるようにする
  • 複数の水飲み場を設置
  • 循環式給水器やスープタイプの食事を活用

ストレスを避ける住環境の整え方

  • 静かで安心できる寝床の確保
  • 新鮮なお水をいつでも飲めるようにする
  • トイレの場所や数の見直し
  • トイレを清潔に保つ
  • 来客時や騒音への配慮
  • 季節に応じた温度・湿度管理を行う

定期的な健康診断のすすめ

慢性腎臓病の早期発見には、定期健診が最も有効です。
特に7歳以上のねこちゃんは半年に一度の健康診断が理想的です。

猫の慢性腎臓病を放置するとどうなるか

尿毒症や命にかかわる合併症

慢性腎臓病を放置すると、老廃物が体内に蓄積し、以下のような深刻な症状が出ることがあります。

  • 吐き気・口臭などの消化器症状
    体内の毒素が胃腸に影響し、強い吐き気や口臭が生じます。
  • けいれん・意識混濁などの神経症状
    アンモニアの蓄積により、けいれんや意識の低下が見られる場合があります。
  • 全身状態の悪化と命への影響
    衰弱、極度の脱水、体力の低下により命の危険を伴う状態に至ります。

まとめ:猫の慢性腎臓病は“早く知って長く付き合う”ことが大切

ねこちゃんの慢性腎臓病は、飼い主さまの早期発見と継続的なケアによって、進行を遅らせ生活の質を保つことが可能です。

川崎市近隣にお住まいの飼い主さまへ。
ねこちゃんのお水の飲み方やおしっこの量、元気の様子に少しでも変化を感じたら、池田動物病院までお気軽にご相談ください。
スタッフ一同で丁寧にサポートいたします。

この記事の執筆・監修 
執筆:菊地(さ) 愛玩動物看護師
監修:名取 獣医師

投稿者プロフィール

菊地(さ)愛玩動物看護士

ペンギンが好きです。ジェンツーペンギンも好きですが、アデリーペンギンが一番のお気に入りです。

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