うさぎの斜頸について

川崎市中原区の飼い主のみなさま、こんにちは。
武蔵小杉駅からすぐの池田動物病院です。

うさぎさんの飼い主さまの中には
「うちの子、急に首が傾いて戻らない…」
「目がグルグル回っているみたいで心配」
といった症状を目の当たりにして、不安を感じたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。

その症状、もしかすると「斜頸(しゃけい)」という病気かもしれません。

うさぎさんの斜頸は、軽症から重度までさまざまなケースがあり、原因や治療法も複雑です。
しかし、早期の対応によって、改善や回復の可能性を高めることができます。

この記事では、うさぎさんの斜頸について、原因、症状、診断、治療、予後、予防法を解説いたします。

目次

うさぎの斜頸とは

うさぎさんの「斜頸」とは、首が左右どちらかに傾き、まっすぐに戻せなくなる症状のことを指します。
重症化するとバランスを崩してぐるぐる回る(ローリング)眼が細かく揺れる(眼振)などの症状が見られます。

原因はひとつではなく、神経系・感染症・外傷など、複数の要因が関与しています。
症状の重さによっては、食事や移動が困難になることもあります。

うさぎの斜頸の症状

○初期症状

  • 首が左右どちらかに傾いている
  • バランスを崩して同じ方向に回り続ける(ローリング)
  • 眼が小刻みに動いている(眼振)
  • 食欲が落ちた、よだれが出る、顔を傾けてごはんを食べる
  • 歩き方がおかしい、まっすぐ歩けない

うさぎさんの斜頸は、ある日突然起こることもあれば、徐々に悪化していくこともあります。

うさぎさんの斜頸の主な症状を詳しく見ていきましょう

首の傾き

首が左または右に傾いて固定されます。
症状が軽度であれば、日常生活に支障が出ないこともありますが、悪化すると自力での移動や食事が困難になります。

眼振(がんしん)

眼球が左右や上下に小刻みに動く症状です。
内耳や脳の異常が関係していることが多く、斜頸と同時に現れることがあります。

バランスの喪失

バランスが取れずにぐるぐる回ってしまう(回転運動(ローリング))状態です。
歩行困難や転倒が起こることがあります。
斜頸の中でも重度の症状であり、うさぎさん自身も非常にストレスを感じています。

うさぎの斜頸の原因

うさぎさんの斜頸の原因はさまざまで、それぞれ治療法や予後も異なります。
ここでは、主な3つの原因について詳しく見ていきましょう。

エンセファリトゾーン(E. cuniculi)感染

最も多い原因のひとつが「エンセファリトゾーン・カニキュリ(E. cuniculi)」という寄生性の原虫です。
この原虫はうさぎさんの脳や神経、腎臓に影響を与え、斜頸や運動障害、失明、尿漏れなどを引き起こすことがあります。

国内のうさぎさんの70%以上がこの原虫に対する抗体を持っているとされており、ストレス免疫低下で症状が発症することがあります。

中耳炎・内耳炎

耳の奥に炎症が起きると、平衡感覚に異常が生じ、首が傾いたり、眼振が起こります。
細菌感染が原因のことが多く、抗生剤などでの治療が必要です。

外見でわかりづらいこともあるため、レントゲンやCTなどでの詳細な検査が推奨されます。

外傷・神経障害・腫瘍

高いところからの落下、頭部の衝突、脳腫瘍などが原因で神経に損傷が起きた場合も、斜頸が発症することがあります。
このようなケースでは、回復が難しいこともあります。

腫瘍が原因である場合、腫瘍科の専門的な診断と治療が必要です。

うさぎの斜頸の診断

斜頸の診断には、血液検査、画像診断(レントゲン、CT)、耳の検査などが行われます。​

うさぎさんの斜頸は、原因が多岐にわたるため、正確な診断が非常に重要です。

  • 神経学的検査(バランス感覚や動きのチェック)
  • 血液検査(E. cuniculi抗体検査)
  • レントゲン、CT検査(神経や骨の異常を見る)
  • 耳の検査(中耳炎・内耳炎の確認)

また、腫瘍が疑われる場合は、専門の腫瘍科医による診断と治療も可能です。

うさぎの斜頸の治療法

治療は原因により異なりますが、基本的には抗生物質や抗寄生虫薬の投与、抗炎症剤の使用などの内科療法が中心になります。​

エンセファリトゾーンが原因の場合:対症療法

抗原虫薬フェンベンダゾールなど)と炎症を抑えるステロイド、抗生剤の投与が一般的です。
神経症状が重い場合は、ビタミン剤や神経保護剤も併用することがあります。

中耳炎の場合:抗生物質治療

中耳や内耳に細菌が感染している場合、内服や注射による抗生物質の投与が行われます。
膿が溜まっている場合には、お耳の洗浄や外科的処置が必要になることもあります。

外傷や腫瘍が原因の場合:対症療法・専門治療

外傷が原因の場合は、神経保護剤や鎮痛薬の投与が行われます。
腫瘍の場合には、画像診断の上、専門的な治療が必要になることもあります。

うさぎの斜頸の予後と生活の工夫

斜頸は完治することもあれば、首の傾きが残る場合もあります。
特にエンセファリトゾーンが原因の場合は、早期の治療で完治率が高まるとされていますが、完全に治らず後遺症が残るケースもあります。

とはいえ、首が傾いたままでも元気に生活しているうさぎさんも多くいます。
飼い主さまのサポートと環境の工夫によって、十分にQOL(生活の質)を維持することが可能です。

斜頸のうさぎと暮らすためのサポート方法

治療中や後遺症が残ったうさぎさんにとって、安全で快適な環境を整えることが大切です。

ぐるぐる回ってしまう子や、バランスが取れない子には、低めのケージやクッション材を使用して、怪我を防ぎながら日常生活をサポートします。

リハビリとして、手で支えながら歩く練習をすることで回復が促進されることもあります。

  • ケージの床にクッションやタオルを敷く(転倒防止)
  • 低めの食器や水入れを使う(傾いた首でも届きやすい)
  • 落ち着ける環境を作る(音や光を控えめに)

斜頸が完全に治らなくても、上手に適応して元気に暮らしているうさぎはたくさんいます

西洋治療と組み合わせて、東洋医学(鍼や漢方)も効果的です。
以下のブログをご覧ください。

うさぎの斜頸の予防法

斜頸のすべてを予防することは難しいですが、以下のような日常の習慣でリスクを下げることができます。

  1. 定期的な健康診断(半年に1回以上)
  2. ケージや遊び場の安全性を確保(高所からの落下を防ぐ)
  3. ストレスを与えない飼育環境(音・寒暖差・急な環境変化)
  4. 清潔な耳のケア(耳ダニや感染症の予防)
  5. バランスの取れた食事(免疫力を維持)
  6. 食欲・行動の変化にすぐ気づけるよう日々観察する

うさぎの斜頸のまとめ

うさぎさんの斜頸は、放置すれば日常生活に支障をきたすだけでなく、命に関わることもあります。
原因が多岐にわたるからこそ、正確な診断と早期治療が必要です。

「最近、うちの子の首が傾いている気がする…」と感じたら、ぜひお気軽にご相談ください。

投稿者プロフィール

菊地(さ)愛玩動物看護士

ペンギンが好きです。ジェンツーペンギンも好きですが、アデリーペンギンが一番のお気に入りです。

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