猫の腎臓病とは?「よく水を飲む」は初期サインかも|7歳から気をつけたい原因・対策まとめ

川崎市中原区の飼い主のみなさま、こんにちは。
武蔵小杉駅からすぐの池田動物病院です。

当院では、ねこちゃんの腎臓病に関するご相談を多くいただいています。
特に7歳を超えたねこちゃんに多くみられるこの病気は、飼い主さまの早期発見と日常ケアがカギになります。

この記事では、ねこちゃんの腎臓病の症状、原因、診断方法、治療、食事、予防までを看護師の視点から丁寧に解説します。

目次

猫の腎臓病とは?年齢とともにリスクが高まる慢性疾患

猫の腎臓の働きと病気による影響

腎臓は体内の老廃物をろ過し、尿として排出する臓器です。
電解質や水分の調整、ホルモンの生成にもかかわっており、ねこちゃんの健康を支える重要な役割を担っています。

腎臓病になるとこれらの機能が徐々に低下し、身体に有害な物質が蓄積されていきます。
ねこちゃんの腎臓病の多くは慢性腎臓病(CKD)で、時間をかけて進行していくのが特徴です。

猫の腎臓病の初期症状とは?飼い主さまが気づける変化

水皿から水をペロペロと飲むキジトラ猫(猫の水分摂取の様子)

よく見られる初期症状のチェックリスト

  • お水をよく飲むようになった
  • トイレの回数やおしっこの量が増えた
  • おしっこの色が薄い
  • 食欲が落ちてきた
  • 体重が少しずつ減ってきた
  • 毛並みがわるくなった
  • 寝ている時間が長くなり、元気がない

見逃しやすい変化と注意点

これらの変化は老化現象として見過ごされがちですが、腎臓病のサインであることが多いです。
特に「お水を飲む量」が急に増えたときは要注意です。

猫の腎臓病の主な原因とは

加齢による慢性腎臓病

ねこちゃんの腎臓病の最も多い原因は、加齢による腎臓の細胞の劣化です。
7歳を過ぎたあたりからリスクが上がり、10歳以上では3頭に1頭が腎臓病を抱えているともいわれています。

その他の疾患や要因

  • 先天性疾患(多発性嚢胞腎など)
  • 脱水状態の継続
  • 高血圧
  • 尿路結石や尿閉
  • 感染症(猫伝染性腹膜炎など)
  • 中毒(ユリ科植物、エチレングリコール等)

猫の腎臓病の検査と診断方法

血液検査とSDMAとは

血液検査ではBUN(尿素窒素)CRE(クレアチニン)SDMA(早期腎不全マーカー)などの数値を測定します。
特にSDMAは早期の腎機能低下を検出できるため、最近では非常に重要視されています。

血液検査の数値表の横に座る白茶の猫(腎機能検査のBUN・CRE・SDMAの数値が示されている)

尿検査・画像診断・血圧測定の役割

薄い黄色の尿が入った試験管の横に座るキジトラ猫(猫の尿検査をイメージしたイラスト)
  • 尿検査
    尿比重、尿たんぱくなどから腎臓のろ過能力を確認します。

  • 超音波エコー検査・レントゲン検査
    エコー検査で腎臓の大きさや腫瘍の有無を確認します。
    レントゲンで形状や位置を確認します。

  • 血圧測定
    血圧測定で高血圧の有無を評価します。

猫の腎臓病のステージ分類(IRIS分類)

ねこちゃんの腎臓病は、国際的に採用されているIRIS分類(International Renal Interest Society)に基づいており、4つのステージに分類されます。

ステージごとの特徴と進行度

  • ステージ1:高窒素血症なし(クレアチニン正常範囲内)
    血液検査で異常が見られないことも多く、クレアチニンまたはSDMAが軽度に上昇している状態です。

  • ステージ2:軽度の高窒素血症(クレアチニン正常範囲内~やや高値)
    食欲や元気に大きな変化はありませんが、お水をよく飲むなどの軽い変化が見られることがあります。

  • ステージ3:中等度の高窒素血症
    体重減少、食欲不振、嘔吐などの症状が明らかになります。
    腎機能の著しい低下が見られ、治療の必要性が高まります。

  • ステージ4:重度の高窒素血症
    老廃物の蓄積により、尿毒症のような重篤な症状(嘔吐やけいれん、重度の貧血など)が現れ、命にかかわる状態になることがあります。

各ステージでの治療方針の違い

ステージが上がるごとに治療も多様化します。
ステージ1・2では食事療法が中心、ステージ3以降では点滴や薬物療法が必要になることが多いです。

猫の腎臓病の治療法|進行を抑えるための選択肢

腎臓病は完治が難しい病気ですが、治療によって進行を遅らせ、ねこちゃんの生活の質を維持することは可能です。

療法食の導入

リン・たんぱく質・ナトリウムを制限した療法食を使うことで腎臓への負担を減らします。

点滴や薬物療法の内容

  • 皮下点滴による水分補給
  • ACE阻害薬やARBなどの腎保護薬
  • リン吸着剤、胃酸抑制薬の使用
  • 貧血が進行していればエリスロポエチン製剤の使用

猫の状態に合わせた治療のカスタマイズ

治療は年齢・体重・症状に応じて個別に計画します。
通院頻度や投薬方法についても丁寧に説明し、飼い主さまと連携しながらケアを進めています。

猫の腎臓病と食事管理|日常ケアの基本

リン・たんぱく質・ナトリウムの調整

療法食はこれらの成分が厳密に管理されており、腎機能を守る効果があります。

水分摂取の工夫と嗜好性への配慮

  • ウェットフードを活用する
  • 自動給水器で飲水量を増やす
  • 嗜好性が高いフードで食欲を保つ

猫の腎臓病の予防法と日常生活でできる工夫

定期健診と早期発見の重要性

7歳を過ぎたら半年に1回の血液・尿検査をおすすめします。
特にSDMAを含む項目の検査を早めに行うことで、ステージ1の段階での発見が可能になります。

家庭でできる生活環境の整え方

  • 静かで安心できる寝床の確保
  • 新鮮なお水をいつでも飲めるようにする
  • トイレの場所や数の見直し
  • トイレを清潔に保つ
  • 来客時や騒音への配慮
  • 季節に応じた温度・湿度管理を行う

猫の腎臓病を放置するとどうなる?重症化のリスク

尿毒症とは何か

腎機能が大きく低下すると、老廃物が体内に蓄積されて「尿毒症」という状態になります。

命にかかわる症状と緊急対応

  • 吐き気、嘔吐
  • アンモニア臭の口臭
  • けいれんや意識の混濁
  • 体力の低下と衰弱

こうした症状が出る前に、早期に発見・治療を行うことで、ねこちゃんの生活の質(QOL)を保つことができます。

まとめ|猫の腎臓病は早期発見と継続的なケアが鍵

ねこちゃんの腎臓病は避けられない老化現象の一部とも言えますが、飼い主さまが日々の変化に気づくことで、早期に対処することができます。

池田動物病院では、ねこちゃん一頭一頭に合わせた検査・ケアのご提案を行っております。
「なんとなく気になる…」
そんな小さな変化も、実は大切なサインかもしれません。
お気軽にご相談ください。
スタッフ一同、心を込めてサポートいたします。

この記事の執筆・監修 
執筆:菊地(さ) 愛玩動物看護師
監修:名取 獣医師

投稿者プロフィール

菊地(さ)愛玩動物看護士

ペンギンが好きです。ジェンツーペンギンも好きですが、アデリーペンギンが一番のお気に入りです。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次