犬の子宮蓄膿症を徹底解説!症状、原因、治療法、予防法をチェック

川崎市中原区の飼い主の皆様こんにちは。武蔵小杉駅からすぐの池田動物病院です。

犬に多いと言われている「子宮蓄膿症」。どんな病気かご存じですか?
犬の子宮蓄膿症とは名前の通り子宮の内部に膿がたまる病気です。早期に発見して治療することで完治させることができる病気ですが、重症化してしまうと命を落としてしまう可能性や後遺症を残してしまうかも知れない、そんな怖い病気です。
今回はこの犬の子宮蓄膿症について解説していきます。

目次

1|犬の子宮蓄膿症とは

子宮蓄膿症とは女の子の子宮内膜が腫れ、そこに細菌感染を起こし、子宮内に膿が溜まる病気です。他の動物でも見られますが、特に犬で多く見られます。

子宮蓄膿症には「開放性」「閉鎖性」の2通りあります。陰部から膿が出てくるか、留まるかの違いになります。膿が出ない方(閉鎖性)が重症なことが多く、すでに重篤な合併症を起こしていることも多いです。

2|犬の子宮蓄膿症の症状

初期の段階では無症状の場合が多いです。進行していくと様々な症状があらわしていきます。

具体的には、

・元気がなくなる
・嘔吐、食欲不振 
・水をよく飲み、おしっこの量が多い
・陰部より出血膿がでる
・膿がお腹にたまって、お腹が出て見える
・腹部を触ると痛がる
・発熱、頻脈

などです。
症状があまり出ていなくても重度の場合もあるので注意が必要です。治療が遅れてしまうと、細菌毒の影響でショック症状を起こしたり、大量に溜まった膿で子宮破裂を起こしたりすることがあります。最悪の場合、死んでしまう可能性もあります。気になる症状を見つけたらすぐに病院に相談してください。

3|犬の子宮蓄膿症の原因

通常、避妊手術をせず、妊娠していない犬は1年に1~2回発情周期を繰り返します。発情期が終了後、発情休止期に移行します。
発情休止期はプロジェステロンという黄体ホルモンの分泌量が増加します。この黄体ホルモンは受精卵を着床させやすくする作用を持ち、妊娠の持続に働きますが、一方免疫力を低下させてしまう作用もあります

黄体ホルモンによっての肥厚した子宮内膜は細菌感染を起こしやすく、さらに免疫力の低下が生じているため、子宮蓄膿症を発症しやすくなります。感染の原因となるもっとも主要な菌は大腸菌であり、尿路感染症が併発することが多いです。

犬は妊娠が成立しなくても、発情期の後に約2ヵ月間の発情休止期が続き、黄体ホルモンが分泌され続けるため、この時期が子宮蓄膿症を発症することが多くなります。
子宮蓄膿症は若い犬でもかかることはありますが、多くは体力や免疫力が低下してくる高齢犬がかかりやすくなります。4歳以上では15%の犬がかかり、9歳以上では発症率がさらに高くなるというデータもあります。

4|犬の子宮蓄膿症のかかりやすい犬種

子宮蓄膿症にかかりやすい犬種はありません。逆にいうと、すべての犬種でかかる可能性があります。

5|犬の子宮蓄膿症の検査

子宮に膿が溜まっているか確認するのが一番になります。

  • 血液検査:白血球の上昇(重症で低下)や電解質異常、炎症マーカーの上昇
      細菌毒素による肝酵素上昇、黄疸、腎数値の上昇など
  • 超音波検査:子宮内の液体貯留(膿)、子宮壁の肥厚、腹水の有無など
  • レントゲン検査:膿の貯留によって腫れあがった子宮の確認

6|犬の子宮蓄膿症の治療

6-1|外科治療

子宮蓄膿症に対する多くのケースで第一選択となる治療法は、卵巣と子宮を摘出する手術となります。全身状態に問題がなければ緊急で行うことがほとんどです。卵巣子宮摘出術は避妊手術と同じ手技で行いますが、膨らんだ子宮は破れやすく、血管も正常な子宮に比べて怒張しているため、開腹は避妊手術の3~5倍程度広めに行います。

体に炎症反応が起きている状態で全身麻酔および手術を行うことは、術中の麻酔リスクや術後の合併症リスクを高めます。全身状態があまりにも悪い場合は、抗生剤投与と輸液療法により体力の回復を待ってから手術を行うこともあります。重症例では必ずしも助けられるとは限りません。

6-2|内科治療

「開放性」子宮蓄膿症の場合、子宮内の膿がほとんど排泄されていて貯留がごくわずかで、なおかつ全身状態が良好といった限定的なケースでは内科治療を行うこともあります。

また、「高齢で麻酔に耐えられない」、「子供を産ませたいので子宮を取りたくない」などの場合、子宮を収縮させ黄体期を終わらせるホルモン剤を注射して、点滴を行うことがあります。ただし、再発する可能性はあるので毎回、発情後の2カ月間は子宮蓄膿症の症状が無いか注意が必要です。

一方、「閉鎖性」子宮蓄膿症の場合は、多くが膿を排泄させることができないので内科治療は行えません。

6-3|手術後の注意点

手術後の注意点として、避妊手術の時と同様に太りやすくなるため体重管理に気を付けましょう。

手術が成功した場合でも感染した細菌の種類によって、血栓を作り、DICと呼ばれる血管内凝固症候群になったり、腎不全を起こしたりすることがあります。細菌が出す毒素によってショックおこし、敗血症を引き起こして死亡してしまう場合もあります。
このため、子宮内の膿の貯留が大量な場合は、投与した抗生物質だけでは回復が難しく、有効な抗生物質を確実に投与する必要があります。有効な抗生物質を選定するため、膿の中の細菌を培養して原因菌を特定し、原因菌の増殖に対して抵抗性を持つ抗生物質を確認する、細菌培養・薬剤感受性検査を行う場合もあります。

通常は全身状態が悪くなく、血栓もできていないのであれば初めは元気、食欲が低下しても数日の入院で回復します。

6-4|治療費

外科手術をして卵巣子宮を摘出する場合、子宮が破裂していて腹膜炎を合併している場合など、重症度によって費用は大きく変わってきます。外科手術を行うと入院日数が数日となる事が多く、犬種や体格、年齢によっても異なりますが、おおよそ20~30万円ほどになります。

7|犬の子宮蓄膿症の予防法

子宮蓄膿症は避妊手術で予防できる病気です。妊娠させる予定がない犬であれば早めの避妊手術を検討しましょう。早めに避妊手術をすることで子宮蓄膿症だけでなく、乳腺腫瘍の発生率も大幅に下げることが期待できます。

また、愛犬が避妊手術をしておらず子宮蓄膿症がご心配な方は、発情周期(生理の出血)を記録しておきましょう。前述したように、発情周期のホルモンによって子宮蓄膿症にかかりやすい時期があります。発情出血が確認された後、1~2ヶ月くらいは体調に気をつけたい時期です。食欲や飲水量を確認し、気になる変化があればすぐに動物病院を受診しましょう。

8|まとめ

今回は、子宮蓄膿症と呼ばれる女の子の犬に発生する病気を解説していきました。この病気は、避妊手術を受けていない犬に発生し、発見がおくれると重大な細菌感染によって命を落とすケースや腎不全などの臓器不全の後遺症を引き起こす可能性があることについて触れてきました。このため、早期発見は重要であることは間違いありませんが、避妊手術によって予防ができます。

避妊手術を行わない1つの理由として、「元気な体に手を加えることに抵抗感がある」という飼い主様からのご意見があります。このご意見は、正当で明確な理由だと思います。しかし、避妊手術を行う1つの理由に「病気の予防」があることも理解しなければなりません。

もし愛犬が歳を重ねて抵抗力が落ちて子宮蓄膿症にかかった場合、命の危険と隣合わせで手術に臨む必要があります。避妊手術であれば、体が元気なうちに最も低リスクで手術を行うことができます。このような病気の予防効果よって避妊手術を行った方が長生きするというデータも存在します。

今回のブログ記事を読んでいただいた飼い主様の中で、愛犬の避妊手術を悩まれている方がいらっしゃったら、この記事が1つの検討材料になれば幸いかと思います。避妊手術には利点ももちろんですが欠点も存在します。ですので、手術の判断に悩んだ際は納得がいくまで相談にお付き合い致しますのでお申し付けください。

投稿者プロフィール

吉窪(獣医師)

これまでに、金魚、シマリス、ポメラニアン、猫と一緒に暮らしてきました。

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