川崎市中原区の飼い主のみなさま、こんにちは。
武蔵小杉駅からすぐの池田動物病院です。
日々、ねこちゃんのケアに携わる中で、慢性腎臓病(CKD)と診断された飼い主さまから、
「どんなごはんを選べばいいのか分からない」
「療法食は種類が多くて迷う」
といったご相談をよくいただきます。
慢性腎臓病は、高齢のねこちゃんにとても多く見られる病気です。
腎臓の働きがゆっくりと低下していくことで、老廃物が体内に溜まりやすくなり、食欲の低下や体重の減少、脱水、嘔吐、貧血などさまざまな症状が現れます。
この病気は完治するものではありませんが、適切なケアと食事管理によって進行を遅らせ、ねこちゃんが少しでも快適に暮らせる時間を延ばすことが可能です。
そのために大きな役割を果たすのが「処方食」です。
腎臓にやさしい成分バランスで設計されたフードは、腎臓の負担を軽減し、栄養バランスも保てるよう工夫されています。
今回は、当院で取り扱っている信頼性の高い慢性腎臓病用の処方食を、メーカーごとに詳しくご紹介いたします。
それぞれのフードの特長を比較しながら、ねこちゃんに合った一品を見つけていただけたら嬉しいです。
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目次
当院で取り扱いのある慢性腎臓病用処方食一覧
ここでは、慢性腎臓病(IRISステージ3~4)に対応した処方食を、当院で実際に取り扱っている製品に絞ってご紹介します。
それぞれのフードに個性があるため、ねこちゃんの体調・好み・生活環境に合わせて選ぶことが大切です。
ロイヤルカナン(ROYAL CANIN) 腎臓サポートシリーズ (ドライ/ウェット/リキッド)
ロイヤルカナン 腎臓サポート 製品一覧
【ドライ】
- 腎臓サポート
- 腎臓サポート セレクション
- 腎臓サポート スペシャル
【ウェット】
- 腎臓サポート チキンテイスト パウチ
- 腎臓サポート フィッシュテイスト パウチ
- 腎臓サポート ビーフテイスト パウチ
- 腎臓サポート ローフ パウチ
ロイヤルカナン 腎臓サポート 製品特長
ロイヤルカナンの「腎臓サポート」シリーズは、ねこちゃんの生活の質(QOL)を保ちながら、慢性腎臓病の進行を穏やかに支える設計が特長です。
フードの形状や香り、栄養設計に細かな工夫が凝らされています。
【ドライ】
- 腎臓への配慮
リンの含有量を低減し、高消化性のたんぱく質を配合。
- エネルギー効率
少ない量でもしっかりカロリーが摂れるよう調整。
- 嗜好性アップ
・ノーマル・スペシャル
独自の香りと粒の形状で食欲を刺激。
・セレクション
食感と香りをより強化し、食欲低下に配慮。
【ウェット】
- 腎臓へのやさしさと栄養サポート
リン制限+高消化性たんぱく質。
- エネルギー密度
少量でも必要な栄養が摂れるよう工夫。
- 香りと食感
食欲が落ちた子でも食べやすい仕上がり。
【リキッド】
- 重症例や強制給餌向け
経腸栄養にも使える液状タイプ。
- 高カロリー設計
少量で効率よく栄養補給。
- 抗酸化ケア
複数の抗活性酸素物質をブレンドして健康をサポート。
ヒルズ(Hill’s) k/dシリーズ (ドライ/ウェット)
ヒルズ k/d 製品一覧
【ウェット】
- k/d チキン 缶
- k/d チキン&野菜入りシチュー 缶
- k/d ツナ 缶
- k/d ツナ&野菜入りシチュー 缶
- k/d やわらかチキン&グレイビーソース パウチ
- k/d やわらかサーモン&グレイビーソース パウチ
ヒルズ k/d 製品特長
ヒルズの「k/d」シリーズは、慢性腎臓病のねこちゃんに向けて開発され、腎臓への負担軽減とともに、筋肉の維持にも重点を置いた処方が特長です。
多彩な風味や食感で、嗜好性にも優れています。
【ドライ】
- 腎臓ケア設計
リンを調整し、ナトリウムを低減。
オメガ-3脂肪酸を配合。
- 腸内環境への配慮
アクティブバイオーム⁺キドニーディフェンステクノロジーで腸由来の尿毒素を管理。
- 筋肉維持
良質なたんぱく質と必須アミノ酸を配合し、筋肉量の維持に貢献。
- 嗜好性アップ
「EAT」テクノロジーにより食欲を刺激。
- 尿石予防
S+OXSHIELDにより、ストルバイト(S)およびシュウ酸カルシウム尿石(OX)の形成に配慮。
【ウェット(缶)】
- 栄養バランス
リン・ナトリウムを調整し、オメガ-3脂肪酸を配合。
- 腸内ケア
アクティブバイオーム⁺キドニーディフェンステクノロジーで腸の健康も意識。
- 筋肉サポート
高品質なたんぱく質で筋肉量の維持に配慮。
- 多彩な食感と風味
複数の食感とテイストを用意し、嗜好性に対応。
- 尿石予防
ドライフードと同様に、S+OXSHIELD対応。
【ウェット(パウチ)】
- 腎臓サポート
リン調整・低ナトリウム・オメガ-3脂肪酸配合。
- 筋肉維持
L-カルニチンと必須アミノ酸が筋肉サポートを強化。
- 嗜好性
やわらかい食感とグレイビーソースで食欲が落ちた子にも対応。
ペットライン(Pet line)Dr.’s Care キドニーケア・キドニーケアプラス シリーズ
ペットライン Dr.’s Care キドニーケア 製品一覧
【ドライ】
- Dr.’s Care キドニーケア フィッシュテイスト
- Dr.’s Care キドニーケア チキンテイスト
- Dr.’s Care キドニーケア プラス(可溶性繊維)
【ウェット】
- Dr.’s Care キドニーケア フィッシュ パウチ
- Dr.’s Care キドニーケア チキン パウチ
ペットライン Dr.’s Care キドニーケア 製品特長
国産メーカーならではの細やかな配慮が感じられる、Dr.’s Careの「キドニーケア」シリーズは、慢性腎臓病とともに生きるねこちゃんの健康維持と食べやすさを両立させた処方です。
【ドライ キドニーケア】
- 腎臓ケア設計
リン・たんぱく質・ナトリウムを制限し、腎臓への負担を軽減。
- オメガ3脂肪酸の強化
DHA・EPAなどのオメガ3脂肪酸を強化し、腎臓の健康維持をサポート。
- 腸内環境サポート
可溶性食物繊維(フラクトオリゴ糖)配合で腸内環境の健康維持にも配慮。
【ドライ キドニーケア プラス(可溶性繊維)】 上記のキドニーケアに比べてサポート強化
- 脱水による便秘に配慮して可溶性繊維を強化
- 抗酸化成分(ビタミンE・C、セレン酵母)+オメガ3脂肪酸で加齢変化に対応
- フィッシュ&チキン味のうまみ粒で嗜好性アップ
【ウェット】
- 腎臓への配慮
リン・たんぱく質・ナトリウムを適切に調整。
- エネルギー効率
少量でもしっかり栄養が摂れるよう、カロリー調整済み。
ピュリナ プロプラン(PURINA PRO PLAN VETERINARY DIETS) NF 腎臓ケア シリーズ
ピュリナ プロプラン NF 腎臓ケア 中期ステージ対応 製品一覧
ピュリナ プロプラン NF 腎臓ケア 中期ステージ対応 製品特長
ピュリナの「NF腎臓ケア」は、IRISステージ中期に該当する慢性腎臓病のねこちゃんを対象に、腎臓への負担軽減と必要栄養の補給を両立させた処方です。
【ドライ】
- たんぱく質・リンの調整
良質なたんぱく質を厳選し調整、リンを低減で腎機能をサポート。
- 栄養補完設計
多尿によって失われやすいビタミンB群やカリウムを補い、代謝の安定に寄与。
- オメガ3脂肪酸の配合
EPA・DHAを含むオメガ3脂肪酸で腎臓の健康維持と炎症対策をサポート。
- アシドーシスへの配慮
アシドーシス(体内の酸性化)を防ぐよう、栄養バランスを調整。
- ナトリウム調整
塩分を適切に制限し、腎臓に配慮。
- 嗜好性アップ
食べやすさにも配慮し、腎臓病でもしっかり食べられるツナ味設計。
サニメド(SANIMED)
サニメド リーナル 製品一覧
サニメド リーナル 製品特長
オランダ発の獣医師専用フードブランドSANIMEDが提供する「リーナル」は、慢性腎臓病のねこちゃんに対して、栄養バランスと代謝サポートを重視した処方が特長です。
【ドライ】
- 腎臓の健康維持
リンとたんぱく質の含有量を適切に調整し、腎臓への負担を軽減。
DHA/EPAを豊富に含むサーモンオイルを配合。
- 尿石症への配慮
シュウ酸カルシウム尿石の形成を抑えるため、グリシンとカルシウムの含有量を調整。
尿酸アンモニウム尿石症の栄養管理にも対応。
- ナトリウム制限
低ナトリウム設計で、血圧と腎臓へのストレスに配慮。
- 動物病院専売
医療現場の声をもとに設計され、小分け包装により鮮度が保たれます。
※サニメドのリーナルのドライサンプルは、取り寄せになりますので、ご希望の方は事前にご連絡をお願いいたします。
製品比較一覧(早見表)
メーカー/製品名 | 特徴ポイント |
---|
ロイヤルカナン 腎臓サポート | 多様な食感と香り/高消化性たんぱく/高エネルギー設計 |
ヒルズ k/d | 筋肉維持設計/嗜好性重視/尿石にも配慮 |
Dr.’s Care キドニーケア | チキン・フィッシュ味/腎臓・便秘ケア/オメガ3強化 |
Dr.’s Care キドニーケア プラス | 可溶性繊維強化/抗酸化成分配合/高嗜好性粒 |
ピュリナ NF 腎臓ケア中期ステージ対応 | 中期腎不全向け/リン・たんぱく制限/栄養補完・高嗜好性 |
SANIMED リーナル | サーモンオイル配合/尿石・血圧配慮/動物病院専売 |
フード選びのヒント
- 嗜好性が低いとき
ウェットタイプを試してみましょう。
温めると香りが立ちやすくなります。
ドライフードもあたためると香りが立ちます。
- 便秘傾向がある場合
可溶性繊維入りのフード(Dr.’s Care プラスなど)がおすすめです。
- 体重減少が見られるとき
筋肉量維持に配慮されたヒルズk/dやピュリナNF腎臓ケアを検討しましょう。
- 水分摂取が少ないとき
ウェットタイプを取り入れることで自然に水分量を増やせます。
ドライフードをふやかしてみるのもおすすめです。
よくあるご質問
Q. 療法食は一生続ける必要がありますか?
A. はい。慢性腎臓病は完治する病気ではなく、進行を抑えることが治療の目標になります。そのため、継続的な食事療法が非常に大切です。
Q. フードの切り替えタイミングは?
A. IRISステージの変化や体調の変動が見られた際には、フードの見直しが必要になることがあります。定期的な血液検査をもとに、獣医師と相談しながら進めましょう。
Q.他の病気と併発していたらどうすれば?
A. 糖尿病、関節症、便秘などとの併発がある場合、それぞれの状態に合わせてフードの工夫が必要になります。複数の療法食を使い分けたり、食べ方に工夫を加えることも大切です。当院では個別のアドバイスを行っておりますので、お気軽にご相談ください。
まとめと当院のサポート
慢性腎臓病は、ねこちゃんにとって長く付き合っていく病気です。
症状が目に見えにくい時期から、適切な食事を選ぶことは、ねこちゃんの体調を安定させ、穏やかな生活をサポートする大きな力になります。
当院では、ねこちゃん一頭一頭の状態に合わせた処方食のご提案を行っています。
「食べてくれない」
「どれを選べばいいか分からない」
といったご相談にも対応しておりますので、どうぞお気軽にご相談ください。
この記事の執筆・監修
執筆:菊地(さ) 愛玩動物看護師
監修:名取 獣医師
菊地(さ)愛玩動物看護士
ペンギンが好きです。ジェンツーペンギンも好きですが、アデリーペンギンが一番のお気に入りです。